表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/46

【第45話】聖なる人を殺す刃


「何故だ───…」


その現象に一番戸惑ったのは教皇ラスであった。

前触れもなく彼の右腕が熟れた果実の如く落ちたのだ。


「有り得ぬ───…!」


ズルリと左腕も落ちた。


聖地上空の白い太陽は縮小を始め消えていく。


「我が身が内包する聖たる原点に耐えきれぬというのか!?何故だ…!?何故…!?そのための尊き王家の血は得たはずだッ…!第一王子の…、まさか───…」


両腕を失った教皇ラスの体は燃え上がった。

「グ、アアアアア!!」

内から壊れ始めている。


「ラナァアッ!!貴様ァッ!これは誰の子だァッ!?アアアアア!!ハローィの子ではないなァッ!!!!」


「……」ラナは何も言わず燃えるその光景を眺めていた。


「ふざけるなァッ!嫌だ!!こんな!このような終わり方はァアア!!嫌だアアアアア!!壊れる!私の肉体が!精神が!耐えきれなァァァァァい!!」


自壊して彼の身体は崩れ始めた。

膝が割れる。


「あ────…」


崩れ落ちた。


聖人は死んでしまった。


三度目はない。聖人は二度とは蘇らない。


   ◆


「はぁ…はぁ…終わったのか…?」


教皇ラスは粉々になった。

いつの間にか外は暗くなっていた。夜だ。

それが聖人の死の証明なのかもしれない。


警戒しながらゴブルは肘から先のない右腕でテーブル上のコップを倒した。

水がこぼれテーブルから垂れて下半身だけのメリッサを濡らす。ボコボコと水に反応してメリッサは復活した。


「黒の王…!すぐにご修復を!」


起き上がったメリッサはすぐゴブルの治療に当たる。

本気を出せば両腕の修復ぐらいすぐだ。


「教皇ラス…。僕の遙か先を行っていた」


「ラナ…。どういう事だ…?」


ハローィが立ち上がりラナの元に寄っていた。


「王の血じゃない…。私の子ではないと…」


「それどころの話ではないと思いますよ…」


ラナは自身で治療魔法をかけ体調を戻していた。


「私達の赤ちゃんが死んだのですから…」


教皇ラスにはなったがあの赤子は間違いなくラナの赤子であった。


燃え尽きた遺灰の小山は本当の子の物なのだ。

ラナのショックは計り知れない。


「真実を話してくれ。私の子だったのか…?」


「私は…、私は…」


「…イーサンの、子か…?」


「殺してください…」


「分かった」ドス!


漆黒の杖でゴブルは突き刺した。


第一王子ハローィを。


「あガガ…。グェ…」


嘴のような杖先の刃が胸をズタズタに突き刺している。

ドス黒い血を口から垂れ流して程なくハローィは事切れた。


「ラナ」


彼女は全てを失った。


涙を流している。


魔王を打ち倒す者たち【選ばれし者】は決して逆境に挫けない心の強さ、勇気を持っている。

故にラナはこの辛すぎる現実を前に発狂し逃げることはできなかった。


「僕はゴブルだよ」


(え、このタイミングですか…?)


ゴブルが顔だけ元のゴブリンに戻し、メリッサは地味にたまげた。

ラナはゆっくりそれに顔を向けたが反応はしなかった。


余りにも色々起きすぎて今更どうでもいいという感じであった。


いや。


「これが私の罰なのですね」


ラナはゴブルの差し出した手を取った。

漆黒の杖に刺される。


聖女ラナもまたゴブルによって彼の横にいるに相応しい【魔王】に作り変えられるのだ。




聖地フェザーは滅びた。


グールしかいない地に新たな国が建国される。

国の名前は【黒国】グルエレール。


王都領地内でその新興国は堂々と独立を宣言した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ