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【第44話】ラストフェスタリア


リォンゴァン!!ガァンゴォン!!

明けた空は黄金色にどこまでも澄み渡っていた。


鐘の音の中ラナの股から産まれた赤子は泣いている。


(何だ…)


ゴブルは戸惑っていた。

黒の王となり無敵の存在となっても分からないことは分からない。


「あ、ああ…」


ラナはダウンしていたが意識はあった。


スキル【織天使】の快楽作用で出産の痛みを和らげたおかげだ。

今はぐったり倒れたまま我が子の声を聞いていた。


彼女自身も何故こうなったかは分かっていない。


(私はドレスに着替える手伝いもしました…妊娠なんてそんな…)


メリッサは傍らにいて動けずにいた。


ラナの腹部は直前まで膨らんでいなかった。

突然腹を膨らませ子を出産したのである。


ゴブルは気付く。


(誰も動かないのではない…動けないんだ)


赤ん坊は四つん這いで歩みだした。


その光景から目を背けることができない。


外の氷の世界は雪溶けていった。

緑が芽吹く。春の訪れ。死滅した自然が繁茂する。

聖地フェザー周辺地域は凍土より生き返った。


そして寒波の直撃を受けたバラー平原のイーサンたちも春の日差しを受け、氷の檻から開放されていた。


「ゲホッ…!ゲホゲホッ」


イーサンが手を付いた大地は柔和で芝生が生い茂っていた。

命の香りだ。


小鳥の囀りを聞きながら空を見上げる。


白い雲が黄色いキャンパスに十字架を描いていた。

 

助かった彼らは口々に「奇跡だ‥」と呟いた。


よちよちと四つん這いでいた赤子は二本の足で立ち歩き始め、少しずつ二歳ずつ成長していく。


リォンガァン!!!ゴォンガァン!!!鐘の音は一際大きく響いた。


成長に目が離せない。黒の王でさえも。


彼が一歩足を進める度に世界のどこかで奇跡と呼ばれる現象が起きていた。


「感謝しかない。黒の王よ───…」


子供が喋った。


「摂理を。決められた道筋を否定する貴様がいたから。私もまた摂理の外に出ずることができたのだ───…」


青年が喋る。

産まれたままの姿、全裸では格好がつかないと思ったのか青年は食器と料理をぶちまけながらテーブルクロスを引き寄せ腰に巻いた。


「我こそラストフェスタリア───…」


リァンゴォン!!ガァンゴォン!!!


赤子はこの短時間のうちに大人になった。


「教皇ラス…」


この日イナゴが飛んだ。

ラッパが吹かれた。

死滅と生誕が同居する地となった。


───今日が約束の日なのだ。


《聖人は死んだ。そして復活を果たした》


数千羽の鳩が同時には飛ぶ。世界が歓喜する。


ここに一度黒の王に破れ死した教皇ラスは、復活した。


「清い気分である───…」


ゴブルの両腕が弾けて消えた。


聖人とは蘇ってからが()()である。

ゴブルはそれに反応すらできなかった。


「黒のッ──ッ」


反応したメリッサの上半身が音もなく消える。


「ああ、我が思いのままだ───…」


教皇ラス自身のスキル【血継聖生誕(リ・レゼネント)】。

彼は死んだ時点でこの世に存在する血の繋がった胎児に魂を宿らせ産まれ直すことができた。


そうやって何度も教皇人生を繰り返してきていた。


「神よ。そこにいたのか───…」


一瞬ラスは姿を消す。


そして改めて姿を現した。

その手には狼らしき獣の首がある。

ボタボタ血を垂れ流す首だけが。


「ここに至り知った。神に意思は存在しない。我々が神と呼び崇め、管理を行っていたのは天に座するだけの神擬き。…あらゆる摂理のルールを作り出していたのは自我なき神の力を行使するため生み出された代理人だったのだ。しかしこの神擬きもまた傀儡。正体はこの世に生き住まう数多生命たちの意志の集合体。つまり摂理とは運命とは誰かに用意されたものではなく、巡り巡ってきた隣人する命が共生するが為課した無意識の制限だったのである。…フェザール。…これにて神の()()は再び不在となった───…」


教皇ラスは首を握り潰す。

血肉は吸収しない。


「神の次元に興味はあるが、私自身人類保全システムに乗っ取られることは避けなければならない───…」


ラナの子として復活を果たした教皇ラスは以前欠けていたとした二つのピースを手にした。

ラナの【織天使】の癒やしの力と、ハローィの正統王家の血を。親から子に、受け継ぐ形で。


()がこれ以上ない"完璧"である。


「今の私には神の力とて不純物───…」


その手が赤く、いや黄色に、黄金色に発光する。


ガチャリ、式場のドアが開いた。

いそいそ遅れて入ってきたのは礼服姿のレーセン。

入ってくるなりラスの指先から放たれた光の弾に胸を穿たれて言葉もなくドサリ倒れ死んだ。

   

「もはや私の混一に同意は不要。痛みなく全人類は一つとなる。この星ごと───…」


聖地フェザーの上空に白い太陽が出現した。


術式で再現したナンチャッテブラックホールのゴブラックホールとは根本から違う、本物の太陽だ。


熱を放射しておらず内へ内へとエネルギーを向ける内部循環型太陽は少しずつ膨れ上がっていく。


「やめろ教皇ラス…。こんな形での救済は誰も求めていない…」ゴブルだ。


「救われる側の意思は関係ない。救済とは常にそういうものだ───…」


誰しも送る生活には改善点がある。それが改善成されれば生活クオリティーは上がるものだ。しかし誰もそうはしない。


何故。

気付かない。選ばないからだ。


だから教皇ラスが選んでやるだけなのだ。救いを。


「感謝は救われた後にするだろう。納得もな───…」


ゴブルは魔王形態大怪獣ゴブルになって空の太陽を破壊しようかと思った。


「無駄である。私と貴様はもう対等ではない───…」


復活を果たした真の聖人は黒の王を凌駕していた。

ゴブルもその通りだ…と汗を流した。


「さあ、導きの刻だ───」


その時ボトリと教皇ラスの右腕がおちた。

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