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【第43話】聖女ラナへの復讐


大怪獣ゴブルの赤く蒼い破壊の咆哮は地表を沿わず宇宙へ突き進んだ。


雪の結晶。白い化身は消え去った。


「お母様…」


女は胸がキューとし悲しくなった。


「ラナ」


名前を呼ばれた。

振り向くと黒いタキシードを着た男がいた。

先程まで外にいた大怪獣はいなくなっている。


「綺麗だね」


パラレア大教会の結婚式場フロア。

メリッサによって式の準備は完了済み。

ゾロゾロと礼服姿の人間が入室してきた。


誰…?とラナは思った。当然である。

教会内の関係者の死体は教皇ラスに取り込まれ失われていた。

彼らはリカリシューの一般住人である。

テキトーにメリッサが良さそうなのを取り見繕ってきたグールの賑やかせ要因だ。


グールたちは礼儀よくテーブルに座る。


「メリッサ。ありがとう」


「ありがたきお言葉です」


   ◆


この地には司祭フレーラという聖職者がいた。

五十代後半、痩身、シリウス正教校に勤務するこの地獄にて【口伝者】としての役目を授かった信心深い男だ。


人類史にとって重要となる転換地に居合わせ目撃し必ず生き残って後世に伝えていくという奇跡を与えられた聖地十三番目の大司祭【口伝者】。


彼はラナ、ハローィに次いでこの場に残った三人目の生存者となるはずだった。


奇跡はゴブルによって否定されたが。

もしかしたらフレーラは生存していればこの結婚式の神父に採用されていたかもしれない───。


   ◆

 

結婚式。本来は王国第一王子ハローィと行うはずであった行為。


「あなたは私と結婚したいのですか…?」


ラナは訊いた。

そうであろうはずだ。でなければ式場を用意してこんなドレスを着せたりはしない。タキシードなんて着てこない。ハローィはまだ目覚めない。


「王様には…、お妃が必要だからね」


「私は貴方の素性も性格も名さえ知らない…」


「よぉく知ってるじゃないか」


「…知りませんよ。ですが貴方の事はこれから知っていけばいい」


ラナは一歩ゴブルに近寄る。


「黒の王様…、貴方は何をやりたいのですか?」


「復讐かな」


復讐、人類へのだろうか…。

メリッサが滅ぼすとかそういうことを言っていたので薄々内容は察することはできた。


「ならばそれを忘れてください。さすれば私は貴方を愛せます、どうか…」


ラナにとって最善はこれだろう。


黒の王と呼称される男の実力は垣間見た。


直に魔法を使っている姿は見てないが、あの六花の墜落物を破壊し、白き化身を消し飛ばした大怪獣の正体が彼だということは空気を読んで分かっている。


あんな力は人類に向けられていいものではない。


聖女は身を呈して人類を守ろうとしているのだ。

夫婦となればある程度の制御もできるかもしれない。

だからこれはハローィへの裏切りではないのだ。

むしろハローィを守るための選択でもある。


(黒の王…、正体を明かしてください)


メリッサは傍から眺めながらそう思った。


(顔だけゴブリンに戻すなんてどうでしょうか。それでキスを迫るのです)


聖地フェザーに脳に寄生する百足をばらまき、手間かけ徐々に追い詰めていったのは【選ばれし者】ラナに最大限の絶望を与えるためである。

  

しかし想定以上にラナの精神面は強かであり、想像していた顔はしていなかった。

むしろここに来て活き活きとし始めてすらいた。


(気づいておりますか?黒の王よ。聖女ラナはまんざらでもない様子です。これでは復讐とはなりません)


理由は分かっている。ゴブルがイケているからだ。


大怪獣級の力を持った悪い男(自分に惚れてる)なんて、女の子からしてみれば白馬の王子様でしかない。


故にここでゴブリンだということを明かせば落差もあってダメージ大のはずである。


(黒の王、早く…)


「復讐をやめるつもりはないよ…」


「では貴方の横にいて必ず私が止めてみせます」


メリッサの願い届かずゴブルはラナの手を取った。


ゴブル自身このタイミングで正体を明かし、嫌がる彼女を無理やり嫁にするつもりであった。

そのため人質にするべくハローィも生かしてはいたのだが…。

好意を浮かべるラナの瞳にゴブルは打ち勝つことができなかった。


正体を明かして嫌われながら夫婦となるか。

正体を隠したまま愛し合うか。


ラナの好意が悪意に変わってしまうと思うと後者を選ばずにいられなかった。


ゴブルと名乗るタイミングなんてまだ先でいいかと考えて、男はこのまま進むことにした。


ハローィは目を覚ます。

悪夢のような手を取り合う新郎と新婦。


「何をやっているんだ…ラナ…」


「ハローィ…」


ゴォン!リォンゴォン!

教会の鐘の音が鳴った。


「まだ式も終わっていないのに気が早いんじゃないかなメリッサ」


「いいえ。黒の王。私は何も操作は…。え?」


外の夜景に光が差し込んでいた。陽の光だ。

途端、夜が明けていく。


「うっ…!うう…」


ラナが呻き声を上げてその場に崩れた。

お腹を抑えて痛がる。


「どうした」


「…あっ!ああああ!!!」


尋常ではない痛がり方だった。

 

「ラナ様…!」


「これは何だ…」


ラナのお腹は大きく膨らんでいた。


   ◆


この地にはフレーラという聖職者がいた。


【口伝者】という奇跡を与えられた男。

この場の三人目の生存者となるはずだった男。


後の世に伝えゆくが為、彼はこの日目撃するはずだった。


───復活(奇跡)を。


   ◆


夜は明け、世界は黄色い朝を迎える。


リォンゴォン!!ガンコォン!!鐘の音。


ゴブルたちの目の前でオギャー!!オギャー!!と命が産声をあげた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 心の中にある資格は下心だけな件。(• ▽ •;)(どこのSMレボリューションかと。)
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