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【第41話】意思なき救いは破壊となりて


───聖女ラナは震えている。


ここはパラレア大教会の一つの結婚式場フロア。

そこへラナとハローィはメリッサに連れてこられていた。


「お美しいです、ラナ様」


一面の壁がガラス張りのこの式場は夜景を楽しめた。


展望できる聖地フェザーの夜景は目にした者の心を必ず感動させてきた。


この地で育ってきたラナにとってここで運命の人と結婚式を挙げることが夢。何度夜景を眺めながら想像する白馬の王子様相手に心をときめかせてきたことか。


第一王子は縛られ口枷をさせられた状態で床に転がされている。


その姿に失望はしていない。

以前から彼には大事な所でどこかパッとしない感じはあった。

決めなきゃいけないゴールをぶちこめない、枠の外に外してしまう星の下に生まれたような。


この地での逆境を経て一皮剥けたかとも期待したが人はそう簡単には変われないようだ。


そういう弱い所があるから力になりたいと支持する者たちも大勢いるが、夫婦なりえる女からすると求めたい物はそこではない。


魔王を倒した強い剣から。

支配する側の頂点に座する権力へ。


そしてそれらあらゆる力を凌駕する異次元の黒に。


ガラスの向こう側の夜景はかつてのものとは違う───。

黒いガラス面に映る、美しいウエディングドレス姿に見を包んだラナの心模様も以前のものとは違っていた。

  

(ああ…、この震えは…、きっと…)


フロアのあちらこちらの脈打つ肉が光に散り消えていくのが最後のフェスタリアの死を物語った。

黒が父を制したのだとラナは理解した。


「これからが本番のようですね」


メリッサが外を眺めながら言った。


天から伸びた白き根は地上に届き繋がりを得て現世に形を描いていく。


「あれはラナ様ですか?」


巨大な白いラナが聖地に立った。

ドレスを着せる手伝いをしたメリッサには体型、胸の形、腰のくびれからして同じように見えた。


だが、ラナの表情を見るとそれは違うようだ。


「あれはきっと…、母の姿です」


(お父様…)


あれが教皇ラスの想い描いた神の姿なのかもしれない。


白き(おお)きな化身は何かを探しているようであった。


そしてガラス面がビシリ!と凍りついた。


「【アンビリティー】」


メリッサが魔法で凍結を取り除いた。


「念のため教会に庇護膜魔法をかけていてよかったです」


「何が起きたのですか…?」


「今の一瞬で外気温が絶対零度を記録しました」


「え…?」ラナの吐息は真っ白だ。


「【暖か防寒着(ホットガード)】」


メリッサは防寒魔法を発動し床で凍えるハローィと共にラナを保護した。


露出の多いドレス姿だがポカポカする。


「ラナ様、この地を中心に大陸がスノードーム化しているようです」


「どういうことですか…」


「氷河期が到来したということです」


外では白い雪が降って、破裂した水道管から吹き出していた水はそのままの形で凍った。


「二十分もしない内に大都市以外に住まう生きとし生けるものたちは死滅することでしょう」


備わるはずであった救済観念はない。


心なき白き塊はただ有した力を振るうだけである。


純白が世界を覆うとする。

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