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【第2話】裏切り仕打ち


「ただでさえ小さい的なのに削っちゃってどうするんですか」


ラナの治癒魔法によって僕の切断された右腕は強制的に生やされる。


「ああああああああああああ!!」


筋肉、骨、神経、皮膚が無理やり伸ばされる感覚、激痛。


「死ねッ!!死ねぇえええええ!!」


痛みにのた打ち回っているとナックルにこれでもかというぐらい容赦なく鞭で打たれた。

音速を超えた鞭の先端が肉を破く。


「【浸閏棘雷(クラルーライ)】」


ナックルが後ろに跳んで、エリーナの黒い電撃が僕を貫いた。

神経を蝕む雷魔法。生き物に痛みを与えるのに特化した魔法だ。


「ああああああああああああ!!!!」


小さなハイゴブリンの身体にはオーバーすぎる攻撃の数々。

それでもラナの【織天使の致死否定】によって僕は死なない。死ねない。


「手応えがなさすぎるよ!こいつ!!」


「まったくですね…。弱すぎて達成感がありませんわ」


「うん…。こいつの故郷を焼いたときの方がすっきりした…」


故郷を、焼いた…?


「あっ、なんか立ちましたわ。【織天使の致死否定】の光球に体力を徐々に回復させる効果がありますし不思議ではありませんが、うふふ、怒りが原動力になってるみたいですわね」


「じゃあ、もっと怒らせてみようか…。ゴブル、あなたの故郷を滅ぼしたのは私の魔法、我が本流…」


嘘だ。


そんなの噓だ…!僕の故郷を襲ったのは魔王軍のはず…!


「あんな、客にご馳走だと言って生肉出してくる村は、滅ぶしかない…」


あああ、そんな…。


おかしいと思ってんだ…、おかしい、ずっと変だと…!

だって、あの日の魔王軍の観測記録なんてどこを探しても見つからなかった…!

わざわざ魔王軍がハイゴブリンの集落を攻撃する理由もない…!!でも。


でも、みんながそうだと言うから───…


信じていたのに。


「あああああああああ!!!」


「はい!はいはいは~い!僕も!僕も暴露したい!ゴブルが最初の頃に連れてたペット、子犬のレプー。すぐにはぐれていなくなっちゃったけど、あれ実は僕が蹴り殺しちゃったんだよね」


嘘だ。嘘だああああああ!!


「ナックルちゃんは悪くありませんよ。死にかけのレプーちゃんをちゃんと私の所に持ってきたじゃないですか。治してくれって。わたしがそれ断っちゃいましたけど、あははははは!」


「ああああああああああああああああああああああああああ!!!」


気づけば怒りのまま僕は走り出していた。

痛みも苦しみも怒りに忘れて、目の前の許せない仲間に拳を向ける。


「【怒涛竜撃(ドドドドラゴ)拳】九剣綸八掌!!!!」


逆に全身に拳を決められた。

ナックルの修めた人類最高峰の武術の前に僕はなすすべもなく返り討ちに遭う。


内臓が灰色になって涎と共に口から排出される。


「あっが…ッ、が、がが…」


「ざまぁねぇなゴブル。思い知ったか。同じ選ばれし者でもてめぇだけは低劣なんだよ」


イーサン…。


初めてできた()()の友達。


「そんなゴミなお前を守って連れてきたのは…、まあ色々事情はあったが、これだよ」


イーサンは瓦礫を蹴り飛ばし、その下にあった真っ白な祠のようなものを見せてきた。


ここに来た時からずっと気になっていた大広間の真ん中に建つ雰囲気に合わないインテリアだ。

激しい戦闘に巻き込まれながら白い外面には傷一つ汚れ一つ付いていない。


しかしその艶やかな祠に僕は何かを感じた。汗が止まらない。

魔王より恐ろしい予感がする。


───逃げ出したい。


「ごえっ!」


無言のゴッズが僕の背中を踏みつけてきた。

逃げ出せないように体重をかけられる。


「これは魔王鎮魂祠だ」


クスクス、女たちが笑う。


「これから【選ばれし者】の一人の肉体と魂を捧げ、今後百数年の世界平穏を祈る」


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