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アストリアとアタナーズ〜若き皇帝陛下は、幼い妹殿下を愛する〜  作者: 下菊みこと


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14/22

二人目のお友達

「お友達?」


「そう、お友達」


アストリアはアタナーズに新しいお友達を作ろうと言われて目を輝かせた。


「今度はどんな子?ガビーとも仲良くできるかな」


「今度は人間のお友達だよ」


「え、本当!?」


さらに嬉しそうな表情を見せるアストリアに、アタナーズも嬉しくなる。


「貴族の女の子をとりあえず一人紹介するよ。仲良くできるかな?」


「うん!」


こうしてアストリアは、新しいお友達候補と会うことになった。


















「お初にお目にかかります、ドリアーヌと申します。こちらは娘のドロテでございます。ドロテ、ご挨拶を」


「は、はじめまして皇女殿下」


「はじめまして!アストリアです。これからよろしくね!」


アストリアの新しいお友達候補、ドロテは母親である侯爵夫人と手を繋いで現れた。アストリアは何か、懐かしいような羨ましいような気持ちになる。しかしそれが何故なのか、アストリアにはわからない。


「じゃあ、何をして遊ぼうか?あ、こっちは私のお友達のガビーだよ。仲良くしてね」


「…わあ!大きなネズミ!可愛い!」


「優しくていい子なんだよ!触っても大丈夫だよ!」


「本当だ…触らせてくれるんだね、ありがとう」


一瞬で打ち解けたアストリアとドロテ、そしてガビー。するとドロテがガビーを撫でる手を止めていきなりアストリアに頭を下げた。


「え、どうしたの?ドロテちゃん」


「皇女殿下、お願いです。お母様の病気を治してください!」


いきなりのお願いに困惑するアストリア。一方ドロテはドリアーヌに叱られる。


「こら、ドロテ!無理なお願いはしちゃいけないと教えたでしょう?」


「だってお母様、このままじゃ死んじゃうんでしょ?いやだよ、死なないで」


「ドロテ…」


ただならぬ雰囲気に、アストリアは話を聞くことにした。


「えっと、詳しく説明してくれる?」


「お母様が、治らない病気にかかっちゃったって…治せるのは聖魔力くらいだって…」


「うーん、そっか」


「お願いします!お母様を助けてください!」


アストリアは、まだ未熟な自分には荷が重いことはわかっている。だが、やはり見捨てることは出来なかった。


「今すぐに治せるかはわからないけど、とりあえずやってみるね」


「皇女殿下…!ありがとうございます!」


「で、ですが皇女殿下…ご負担になってしまいます」


「いいよ、大丈夫。とりあえず、試すだけでもダメ?」


「皇女殿下…」


聖女たるアストリアの最大限の慈悲に、ドリアーヌとドロテは感動して涙を浮かべる。そして、そんな二人を前にアストリアは祈り、聖魔力をドリアーヌに注ぎ込んだ。


「…どうかな」


「あ…病気の証である痣が、多少薄まりました」


「よかった!少し休んだらまたやろう?」


「で、ですがそれでは皇女殿下の負担が…」


「お願い。やらせて?」


アストリアの懇願で、結局聖魔力での治癒を受け入れるドリアーヌ。そして、一日をかけて少しずつ休憩もはさみながら治癒し続けた。結果。


「…やった!」


「…お母様ぁっ!よかっ…よかったぁ…!」


「ドロテ…!皇女殿下、本当に、本当にありがとうございますっ」


「ありがとうございます、皇女殿下ぁっ」


「うん、よかった、よかったね!!!」


ドリアーヌとドロテが馬車で帰らなければならないギリギリの時間に、病気の痣がなくなった。完治した証拠であると思われる。


「一応、あとでお医者さんの診察も受けてね」


「はい!」


「皇女殿下、あの、わがまま言って本当にすみませんでした!ありがとうございました!それで、あの」


「うん、なあに?」


「次に来る時は、お気に入りのお菓子を持ってくるので…一緒に食べてくれますか?」


ドロテの言葉に、アストリアは嬉しそうに笑う。


「うん!楽しみにしてるね!」


こうしてアストリアはひとりの命を救い、仲の良いお友達を作ることに成功した。

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