アストリアの休日
「アストリア、今日は聖女としてのお仕事はお休みだろう?何をして遊ぶのかな?」
「ふふふ、あのね、聖魔力を使って遊ぶの!」
「え?」
「使用人のみんなの怪我や風邪を治して回って、お医者さんごっこ!」
アタナーズは、休みの日までそんなに頑張らなくていいのにと思う。思うが、アストリア本人がやりたいのなら止めるのも可哀想だ。
「じゃあ、無理はしないで休憩しながらやるんだよ」
「うん!」
「特に水場の担当の使用人たちは手が荒れて大変だろうから、まずはそっちから回ってみるといいかもね」
「はーい!」
てとてととガビーと共に歩き、どこからか入手したらしい子供用とペット用の白衣を羽織って割と本格的なお医者さんごっこを始めるアストリア。楽しそうなアストリアの様子を見て、無理しているわけではなく心から楽しんでいると分かりアタナーズもホッと胸をなでおろす。
「ガビーもいるし、まあ大丈夫か」
「皇帝陛下は、ガビーを信頼していらっしゃるのですね」
「そりゃあ、アストリアの友達第一号だしね」
「そうですか」
「それと…歴代の聖女は何かしらの動物と心を通わせて、その動物に守られていた記録があるんだ」
側近は反応する。
「無意識に使い魔にしていたということですか?」
「詳しくはわからないけど、多分そう。パートナーとなった動物達はみんな、長寿だったと聞くし」
「なるほど…」
「ガビーはきっと、アストリアを守ってくれる。それは使い魔とかを関係なしにしても、きっとそう」
「ですが、そろそろ人間のお友達や側近も欲しいところですね」
側近の言葉に、アタナーズは少し考える。
「アストリアも聖女の仕事で、人と少しずつ関わっている。このまま貴族の娘と引き合わせたり、将来の側近をさりげなく配置するのも悪くはないか」
「ええ、それがよろしいかと」
「ただ、急にことを進めてもいいことはないだろう」
「焦らず、少しずつでも進めていきましょう」
「…うん、そうしようか。アストリアと引き合わせる貴族の娘のリストを作らないと」
アストリアは、少しずつ環境が変化しつつあることにまだ気付いていない。その変化は果たして良いものだろうか。




