第70話 第6章「堅柳宗次、北へ。」その1
ここまで読んでくださっているみなさま、本当にありがとうございます。
最近投稿の間隔が長くなってしまい、申し訳ありません。
頑張って書き続けますので、これからも登場人物たちと共に”列島世界”での旅をご一緒して頂ければこれ以上の幸せはありません。
では、これからもよろしくお願いします。 作者より。
堅柳宗次が率いる北方遠征の先発隊が出発したのは慶恩の白鷺城で八家門会議が開かれてからわずか二日後であった。
その疾風のごとき素早さに人々は舌を巻いた。
慶恩の都からは東西南北に街道が伸びている。
そこからさらに枝分かれするように各都市から集落まで道は張り巡らされていた。
宗次が率いる約百人の先発隊は当然ながら北街道を進んだ。
先発隊が堅柳の里を旅立ってから五日後の夕方である。
一行は予定地である、山間の村に着いた。
先発隊にさらに先んじて、早馬に乗った使者が村や集落をまわっている。
使者は百人という村にとってはかなりの大人数になる軍隊が一夜の宿をとるか野営をすることを告げ、準備を命じていた。
だから彼らがだいぶ幅が狭くなった街道から枝分かれした道を細長い列をなして進み、佐糠和村と呼ばれるその村に着いたとき、村の真ん中にある広場は片付けられ、ただのだだっ広い地面となっていた。
村に入る直前、宗次はあえて自らの乗る馬を遅らせ、彼の斜め後ろで馬を進ませていた佐之雄勘治の横にぴたりとつけた。
勘治にとっては、彼の主君である宗次がほとんど少年のときから、一緒に馬で行くときは習慣的に守ってきた位置取りである。
ただ最近は年齢のせいかわずかに遅れがちな印象があった。
馬を早く走らせているときはかえって目立たないのだが。
「勘治よ」
宗次は話しかけた。
「はい」
勘治は応えた。
「村に着いたらまず村長に挨拶だな。それから野営の準備だ。歩兵たちは疲れているだろうし、それ以上に退屈しているかもしれん。良い気晴らしでもあれば良いのだが、こんな辺鄙な村ではそんなことはさほど期待できんだろうな」
と宗次は言い、彼らは村に入っていった。
先頭の二名の歩兵に次いで馬に乗った宗次、佐之雄勘治、さらに馬に乗った春日野慶次郎が続く。
いつもならまだ若い慶次郎は宗次に負けじと馬をほとんど主君の横につけていくのだが、いまの彼はまだ怪我からの回復途上だった。
もう大丈夫です、とむきになって主張する慶次郎を説き伏せ、堅柳宗次と佐之雄勘治があえて彼を少し後ろからゆっくり進ませているのだった。
そんな慶次郎の周辺から後ろに歩兵が十名ほど、さらに後ろに蛇眼族の騎馬部隊が十人いる。残り九十人ほどはすべて常人の歩兵で、騎馬部隊の後ろから列をなしてついてきていた。




