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蛇眼破り  作者: 石笛 実乃里
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第19話 第2章「北の大崖と大橋と大壁と」その8

 足軽は二人とも縁台に座り、茶と団子を持ってきた赤い着物の娘に馴れ馴れしく話しかけている。

 店の娘はにこやかに対応しながら、少々困った表情をしているようにも見える。

 雪音が近付きながら、えへん、とわざと聞こえるように咳払いをした。

 三十才前後に見える二人の武骨な足軽は咳払いの主に視線を向け、次の瞬間二人して口から勢いよく茶を噴き出した。

 康太と加衣奈がそれを見て思わず笑ってしまう。

足軽の二人は跳び上がるように立ち上がり、雪音に(うやうや)しく礼をした。

「鈴之緒家の姫さま」

足軽の一人が言うと雪音は

「お役目ご苦労さま。でもわたしも勤めを果たしている時ではないの」

と返した。足軽は

「いや、俺たち、じゃなくて私どもは街中(まちなか)見廻(みまわ)り中ではあったのですが、我らが隊長さまも見廻り中に住民と交流して情報を集めるよう指示されておりますゆえ…」

 雪音は険悪にならないように微笑んだまま右手をあげて滑稽な言い訳を止めさせた。

「わたしは勤めを果たしている時ではないと言ったでしょう。ではあなた方の隊長殿の指示に従って仕事を続けて下さいな」

 二人は再度うやうやしく礼をし、雪音たちは通り過ぎて行った。蒼馬は雪音の横を歩きながらまるで自分がまずいところを見られたかのようにばつの悪そうな顔をしていた。

「平和な時が長く続いたからだわ、きっと」

雪音は歩きながら小声で蒼馬に話しかけた。

「だから軍紀も緩んでしまったってこと?それじゃどっちがいいかわからないね。戦乱が続いて軍の規律が保たれるか、平和が続いて軍の規律が緩んでいくか…」

蒼馬が言うと雪音は

「そういう考え方もできるわね」

と面白そうに蒼馬を見つめた。

 次に通りに並んでいるのは陶器やら布やら生活雑貨を売る店たちで、それも過ぎると家屋が並ぶ通りへと入っていく。


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