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蛇眼破り  作者: 石笛 実乃里
182/218

第182話 第11章「アテルイ王国」その1

雪音(ゆきね)蒼馬(そうま)の乗った風切丸(かぜきりまる)はゆっくりと歩いていた。

アテルイ王国の使者二人がそれぞれ乗った馬が先導し、小三治と恩御姉がそれぞれ乗る馬、そして風切丸の三頭がほぼ縦一列になってそれに続いた。

隠し砦を出てからしばらく、一団は農地を進んだ。

蒼馬と雪音が驚いたことには非常に整然とした、稲刈りが終わって稲穂の天日干しも終わったと思われる水田が続いていることだった。

「彼らは狩猟民族じゃなかったの?」

蒼馬が風切丸に揺られながら前に乗る雪音に尋ねる。

「どうも違うみたいね」

雪音は言った。

「近年になって変化したのかもしれないけど。“壁の森”を抜けるのに手間どって最近探索が滞っている間にこんなに状況が変わっているなんて」

「変わってるって…洞爺坊先生が行ったときと比べて、ということ?」

「そうね。もしかしたら洞爺坊先生が教えた結果かもしれないわ。だとしたら先生はただ真叡教の知識を持って帰ったのではないことになるのだけれど」

「洞爺坊先生…無事だといいんだけど」

「そうね。私も祈ってる」

そして農地が終わって家畜の放牧地が現れ、それも終わると現れたのが城塞都市(じょうさいとし)であった。

都市のすべてが武骨な石壁で囲われているのだった。

一同は開かれた門の前にまで来た。

農作業の途中らしき農民が出入りしている。けたたましい鳴き声をあげ、土埃(つちぼこり)を巻き上げるヤギの一団を連れたものもいる。農民たちすれ違いざまいぶかしげに蒼馬たちを見た。

使者は門番に書類を見せ、門番はそれを見てうなずき、彼らの通行を許可する仕草をする。

彼らは大人の身長五人分はありそうな高さの石壁を抜けた。

蒼馬は圧倒されていた。

この石壁で守られた都市は鉄壁の守りを誇っているように思えた。

これだと門さえ破られなければ神奈ノ国の侵攻軍といえども攻めあぐねそうな気がした。

一同は街の大通りを進んだ。

両側に露店らしき小さな建物が並び、北練井よりさらに暖かそうな着物を着込んだ人々が集まって賑わいをみせている。

店主たちの多くはこちらを怪訝そうに見たが、なかには手に持った野菜や肉を振って陽気に笑いかけてくる者もいる。

普通の活気に満ちた市場だった。

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