第170話 第10章「逃避行」その5
ともに列島世界を旅してくださっているみなさま、いつも本当にありがとうございます。
今日は夏休みスペシャル?で初の2日連続投稿にチャレンジです。
みなさまお読みいただければ幸いです。作者・石笛 実乃里より。
一見北練井にもいそうな常人の町人風な男だった。
それが雪音が初めて意識して見る霧の民であった。
霧の民の男は馬上の小三治に笑って話しかけた。
「よお、小三治。今日は何だい?後ろの男の子はだいぶ具合が悪そうだが」
「そうなんだ、メイモクさん」
小三治は答えた。
「悪いが今日は何も持ってこれなかった。北練井のてんやわんやでそれどころじゃなかったのさ」
「まだ俺はなにも聞いてない。あとでゆっくり聞かせてくれ」
メイモクと呼ばれた男は言い、続けた。
「それにしても、その後ろの男の子はだいぶ具合悪そうだな。さてはヨルンバ婆さんに頼るつもりだろ?」
「その通りさ」
小三治は答えた。
「早速だが案内してもらえるかい?ヨルンバさんがいま時間が空いてればいいんだが」
「時間ならたぶん大丈夫だろう。ただあの婆さん、ちと気難しいからな」
そう言いながらもメイモクは集落のさらに奥へ歩き出した。
小三治と意識朦朧なままの蒼馬、雪音、恩御姉が馬に乗ったまま後に続いた。
かれらはすぐに似たような別の小屋の前に着いた。
「婆さん、いまはこの小屋で暮らしてる。朝起きるの遅いからまだ寝てるかもしれん」
メイモクが立ち止まり、かれらに振り返って言った。
「ありがとう。とりあえず相談してみるよ」
小三治と雪音、恩御姉は馬を降り、協力して蒼馬を馬から降ろすと担ぐようにした。




