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蛇眼破り  作者: 石笛 実乃里
132/219

第132話 第8章「侵攻の足音」その19

「きっと雪姫さまは君が自分と同じ次元に達することを望んでおられるのだろう」

「…はい」

「ただ、だからこそ、なのだが」

層雲坊はいっそう声をひそめた。

「いま、君が蛇眼破りを修得しつつあることを、しかも鈴之緒家の人間の助けを借りて、ということが慶恩から来た者に知られるとまずい。非常にまずい」

「そうですね…」

蒼馬は何となく(うなず)きながらも事の重要さが飲み込めて来た。

ひとつ間違うと自分にここまでのことをしてくれている雪音ちゃんを大変なことに巻き込んでしまう…。

「だからだ、」

層雲坊はひそひそ声で続けた。

「場合によってはあえて蛇眼にかかったふりをしていたほうが良いと思う。自分が“蛇眼破り”ができることは絶対に悟られないように」

「はい。わかりました」

蒼馬は今度ばかりは強く頷いた。

「ところでもうひとつ伝えなければいけないことがあってここへ来たんだ」

層雲坊はひそひそ声をやめて続けた。

「北の大門の周辺の、急ごしらえの土塁があるだろう?北方鎮守府と君たちが駆り出されて作った…」

「はい」

「あれを今度は撤去することになった。侵攻軍作戦本部の決定らしい。わたしは洞爺坊先生について北練井城に行ったとき北方鎮守府の人にきいた」

「えっ、そうなんですか?結構大変な思いをして積み上げたんですが…」

「ああ。まったくお疲れ様だったね。今度はあれを早々に撤去して、それが終わったらいよいよ侵攻開始ということらしい」

「そうなんですか…」

「で、またも現地の常人が駆り出されるらしい。明朝にも、君や君の友達の赤間康太くんにも召集の声がかかると思う」

「でも、」

蒼馬はさすがに抗議の声を上げた。

「いま、寺は慶恩からのお客さんを迎えてとても忙しいんです。康太にしたって店をやっていかなくてはいけないし…」

「わたしも手伝えるところは手伝うよ」

層雲は言った。

「いままで君には散々世話になって、修行中の身としては随分と楽をさせてもらったからね」

「…ありがとうございます」

「まあ、詳しくは明朝を待ってくれ。それとさっき言ったことを覚えておいてくれ」

そう言うと層雲は厨房を出て行った。


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