召喚勇者の華麗なる復讐記
「勇者達よ!よく来てくれた!」
王様が僕たちを歓迎していた
そして貴族達も「万歳!」などと口々に叫んでいた
それをよそに僕は隣にいた騎士に言った
「トイレどこ?」
・・・僕のあだ名は「トイレ」になった瞬間だった
いえね王様が
「今、魔族によりこの世界は滅びかけようとしてる・・・」
などと演説していたんだよ
権力者の挨拶というのは結構長いというのがお約束
当然トイレに行きたくなる人間もいるというものだ
・・・まあ僕のことなんだけけどな
後ろの方にいたんだがコソコソトイレに行こうなんて人間はどこにいても分かるってものだ
まあ悪い事をする訳ではないので見ない振りをしてくれるのはどこの世界でもお約束
それをいいことにトイレに行った
もちろん漏れそうだというのは大嘘だ
ネット小説愛好者なら誰でも同じことをするはずだ
だって異世界召喚なんてのは強制拉致と同じだからな
という訳でトイレに行って用を足しながら言った
「ステータスオープン」
もちろん小声で、だ
だってトイレの前に騎士がいるからな
目の前に出てきたステータスを見ると当然のことながら
職業が『勇者』になっていた
まあそうだろうな
王様も『勇者』って言っていたから
ここまでは『計画通りだ、問題ない』、だ
そしてやっぱりあるスキルポイントから2を使って
『偽装』
を手に入れた
もちろん最初にやるのは名前を変えることだ
名前で縛り付けられるってのはお約束だからな
偽装のスキルを使って
『岩崎千尋』
を
『岩崎千』
にした
教室では『岩崎』としか呼ばれていないから大丈夫だろう
・・・オタクのボッチだからな
使える魔法についても偽装した
火魔法と風魔法と土魔法は見えなくした
つまり使える魔法は水魔法だけ、という訳だ
後は偽装のスキルを持っていないように偽装した
鑑定を使われたらひとたまりもないからな
そうそう余ったポイントで
『経験値3倍』
も取っておいた
弱そうに見えて実は強い、ってやつだな
「おれは影の実力者になる!」
ってやつだ
トイレで用を足して大広間に戻ると王様の演説が終わっていた
ちょっとほっとした
だって偉い人の話なんて聞いても何の得にもならないからな
そして召喚されたクラスメイト25人、いや僕がいないから24人か、のステータスの確認も終わっていた
最後に残った僕のステータスを宮廷魔術師が鑑定で確認すれば一段落だそうだ
・・・結構やばかったね
「・・・勇者です」
僕の鑑定結果が報告されたんだが全然感動されなかった
もうすでに男子生徒11人全員を勇者だと鑑定していれば感動も薄れるわな
「使える魔法は水魔法です」
そう言われると周りが
「あ~あ」
って雰囲気になった
攻撃に使える火魔法がないからだそうだ
水魔法なんて飲み水を作る以外に使い道がないとのことだった
「あとスキルポイントは4です」
と鑑定士が言うとなんとも言えない雰囲気になった
みんなスキルポイントが10あったそうだ
その半分以下の僕は期待外れらしい
おかしいよね?
勝手に召喚しておいて自分達の予想と外れると落胆する
「僕は誘拐犯の奴隷でも親でもないのになぜ?」
と言いたい
まあ喧嘩を買うために偽装したんだけどさ
ポイントを使って強制的にスキルをとらされた
・・・完全に奴隷扱いだよね
なんでクラスメイトの皆は文句を言わないんだろうな
とまあそんな訳で僕は勇者としては最下位だというのが知れ渡ってしまった
そうすると待遇もそれなりという訳だ
早い話、用意された部屋の中で一番ランクが低いやつな
北側の部屋で結構不便な所にある
もちろん男子12名だけでなく聖女認定された女子生徒を含めて25人中の最下位
マーズランキング、もとい勇者ランキング25位ってところだろう
当然侍女も最下位
勇者ランキング1位の五反田くんから順番に侍女を指名していき、最後に残った侍女が僕の担当
上位の男子生徒は浮かれてた
たぶん今夜は深夜の運動会になるんだろうな
・・・完全にハニートラップなのになんで判らないかね
ちなみに女子生徒の方は執事だった
お貴族様のイケメンが愛を囁くんだ
経験値がない女子生徒はコロッと騙されていたな
・・・完全にチョロインだよな
まあ僕は侍女に手を出すつもりはなかったからよかったけどな
生出ししたら妊娠するだろう?
・・・旅の恥は搔き捨てとばかりに腰振っちゃいけないと思うぞ
とまあそんな訳で勇者としての訓練が始まった訳だ
成長率3倍のスキルのおかでげ順調に成長し、偽装のスキルにより弱い振りをした
まあ騎士団長からのしごきと言う名のイジメを受けたとか
貴族様から「トイレ様」と嘲笑されたことがあったな
受けた恨みを忘れることはない
奴らに倍返ししてやったというのは別の話
なんで一生懸命にレベルを上げているかというともちろんクラスメイトへの復讐のためだ
イジリと言う名のイジメをされたんだ
いい機会だから仕返ししてやるつもりだ
レベルが上がれば実戦だろう
定番の魔物狩りに駆り出された
その際、意図的に魔物にやられた振りをしてイジメっ子に押し付けた
さすが魔物
いい仕事をしてくれた
もちろん危機一髪の所を助けたよ
死んだらそこで終わりじゃん?
でも手や足がなくなっただけだと生き地獄だ
使えないくせに飯だけは人一倍食う
おまけに手や足が欠損していれば生活するのにも一苦労
そんなお荷物を持つことになれば対応もそれなりに悪くなる
実にいい気味だったな
という訳で勇者の半分くらいを再起不能にした
尻軽さん、もとい聖女様達も同様だ
カースト底辺のボッチ君を言葉攻めでイジメてくれちゃったから
魔族との闘いの時に
「聖女の血を引く子供がこの先増えていくんだ、おまえらまるっと全部皆殺しだ!」
と言ってやった
その日の夜に刺客が襲ってきたね
大怪我をした聖女が多数
実にいい気味だった
もちろん貴族への復讐も忘れていない
宰相が大事にしていた亡き妻の肖像画を屋敷に忍び込んで火魔法で焼き払ってやった
騎士団長は訓練の魔物狩りの時に魔物が殺到するように仕組んで謀殺した
あと娘のウエディングドレスを切り刻んでやったというのもあるな
すべて少し成長したら『隠密』ってスキルが取れたおかげだ
とまあクラスメイトとお貴族様への復讐ファーストで異世界を満喫した
・・・魔族?勇者ランキング最下位ですから適当に戦ったよ?
ちなみに復讐ファーストなので討伐数0だ(笑)
『隠密』スキルを得たのは結構運が良かった
召喚魔法について調べることができたらから
夜中に王の部屋とか探しまくったら約1年で大体のことが判った
もちろん日本への帰還の方法も、だ
基本『召喚』するだけの魔法陣らしい
でも一度事故があったそうだ
勇者が召喚されるときに持っていた弓道の長い弓のせいで召喚の魔法陣を中心に揺れたそうだ
どうやら勇者のみを誘拐する短いトンネルらしい
長い物があると誤作動を起こすみたいだ
ちなみにその時の召喚は無事にできたから結構トンネルは強いみたいだ
弓により一瞬だけど日本と異世界がつながったのが原因だとするとここに勝機がある
勇者召喚の時に大きなものを突っ込めば日本とつながる
その時に伝って帰ればいい
ちなみに召喚陣はというと
召喚に都合の良い日時と召喚の巫女の2つが必要だった
なお巫女は呪文を唱える人間という訳ではない
召喚陣を作った初代王族の血を引く人間が必要だということらしい
遺伝子がキーワードになっているみたいだ
凄いよね
召喚陣による遺伝子チェック
・・・という訳で召喚に都合が良い日に王族全員を召喚陣がある部屋に攫ってきた
そしてまず王様を剣で刺してみた
血が触れると召喚陣が輝きだした
計画通り、いや予想した通りだった
そこで第一王子、第二王子、第一王女と順番に剣で刺していった
もちろん致命傷
今は生きているけどいずれは死ぬ
そんな感じで刺していった
・・・散々騎士団で訓練させられたからな
魔族や魔物を殺すための練習
おかげで大助かりだ(笑)
王様が
「こんなことをやって只で済むと思うな!」
とか叫んでいたけどそんなのは関係ない
日本に帰れば無関係だからな
いや逆に大動脈を切られて死にそうなのにわかっていないのには嗤えた
どこまでも不愉快な人間だったね
王族全員が死ねばもう召喚陣は使えない
魔族に滅ぼされるだけの簡単なお仕事です
そういう事
ああ王族は致命傷だからここで死ぬんだっけ?
ご愁傷様だな
と言っている間に召喚陣が勇者を誘拐してきそうになったのでこちらから丸太を突っ込んでみた
普通の弓で機能障害なら、長くて太い丸太なら大丈夫だろう
僕が日本に帰る間くらいは持つはず
多分だけど
そこは賭けだよね
帰れるかどうかは誰も分からない
だってやったことないから
だから賭けてみる
ミスリル製の全身鎧で防御した
何かあった時のために爆発させる魔石を用意した
もちろん非常食や金貨や剣なんかも鎧の内側に装備した
さあ帰ろう!
そう思い召喚陣に飛び込んだ
・・・クラスメイト?
もちろん異世界に置いてきぼりだね(笑)