第二の魔王誕生編 1-5 メンザスの末路
よろしくお願い致します。
ドドンゴを無残にもバラバラにしたアークは、大事な家族や仲間達を殺したお前らよそ者を絶対に許さないと、その場に居たメンザスに告げ、再び姿を消した。
メンザスは圧倒的な邪の力を感じており、アークを連れて行く事は既に諦めていて、その場からどうやって逃げようか必死に考えていた。
【グロースト】の魔法を使い自分の分身を何体も作り出し、攻撃を仕掛ける者、囮になる者、今の自分の身代わりになる者、それらを使いその隙にテレポートで逃げようと考えに至った。
しかし、実行しようとグローストの魔法を唱えようとしたが、なぜか魔法が出ない。
再度唱えるも全く出ない。
「なぜだ、魔法が使えない」
メンザスは試しにテレポートを使ってみたが、同じく発動しない。
焦っているメンザスの前にアークがいきなり現れた。
「キミの魔法やスキルは僕が封じたから使えないよ。 逃げたいのに逃げられないってすごく怖いでしょ?」
「クッ、ならお前を殺すのみ!!」
メンザスはマントを脱ぎ隠し持っていた短剣でアークの胸を刺した!
しかし短剣はアークに触れる前に刃の部分がみるみる吸い込まれる様に消えて、使い物にならなくなってしまった。
空かさず反対側の手にもう一本短剣を持っており、その短剣でアークの首元を切りつけた。
今度は斬りつけることに成功した。
しかし斬りつけた首元の傷から血が吐き出す事はなく、一瞬で傷が塞がってしまった。
「さっきのが自然バリアでこれが自然治癒の力みたいだね。自然バリアは意図的に外すこともできるんだ。傷も結構早く治るんだなぁ」
「貴様、俺の攻撃で自分の体の強度や仕組みの実験してやがったな」
アークはわざとメンザスの攻撃を受け、まだ慣れない自分自身のこの体を詳しく調べようとしていた。
「ふざけやがって、仕方がない最後の奥の手を使わせてもらう。くらえっ!」
メンザスの腰に巻いてあるベルトには何やら巻物のような物が3本付いており、その中の1本を取り出して開きアークから離れ始めた。
すると巻物が光り出し、上空からとても大きな火の玉が7、8つ程アークめがけて降ってきたのだった。
しかもその火の玉一つ一つからとても強力な魔力を感じとれる程の威力を持っていた。
「ハハハハ、俺の魔法は封じ込めたみたいだが、これはスクロールと言ってな、他人の魔法を封じ込めた巻物なんだよ。 だから関係なく発動したって訳だ。 しかもこのスクロールは【ファイヤーボールLv10 金のスクロール】でな、普通のスクロールじゃ耐えられない最高級レベルの魔法を封じ込めることが出来る代物だ。 流石のお前も最高級レベル魔法じゃ防ぎ切れまい」
メンザスが人が変わったかのようにベラベラと話しているうちに巨大な火の玉はアークのすぐ近くまで接近し、そのまま直撃すると思われた。
しかし次の瞬間、巨大な火の玉はアークの体に触れるか触れないかの所で次々と消滅し、すべての火の玉が何事も無かったかのように消えて行った…。
「バ、バカな…最高級レベル魔法だぞ、どうなっている!?」
「魔法吸収能力もこんな感じなんだ。吸収できる事は何となくはわかってたけど、実際に受けてみないとまだまだ分からないことがたくさんあるなぁ」
アークはファイヤーボールを弾くでも打ち消すでもなく全て吸収していた。
「きゅ、吸収!?ファイヤーボールLv10をすべて吸収したと言うのか!あり得ない!!!当たれば町一つ簡単に吹き飛ばす威力なんだぞ!?」
「そんなの知らないよ。それよりまだ持ってるよね、スクロールってやつ。どんなのが入ってるの?早く見せてくれない?」
メンザスは持っているスクロールの中で今のファイヤーボールが一番強く、そのファイヤーボールでさえ全く歯が立たないとなると残りの2本を発動する意味がないと分かっていた。
メンザスは両手を挙げ話し始めた。
「俺はダムドラムと言う王国の者でな、その国の住人は人間族も居れば俺みたいな魔族や竜族なんかも居る。そして表向きは普通の王国だが、実際は殺しの請負人として各地で対象の殺害や暗殺を繰り返し行なっている。普段は人間からの依頼が多いが今回は特別な依頼という事で、私の同志である魔王軍からこの村に我々の仲間になり損ねた後の勇者がいるから、子供のうちに殺せと言う事で、俺たちが来た訳だ」
「すまなかった。許してくれ。このまま帰ったところで失敗したとして殺されるだけだ。代わりにダムドラムの場所を教えるから、見逃してくれないか?」
「んー、じゃあまず僕の質問に答えて。イーライはモンスターの群れに襲われたって言ってたけど、モンスターはどこ行ったの?」
「モンスターはもう1人の仲間が炭鉱にお前を探しに行くために連れて行った」
「へー、もう1人仲間が居たんだね。じゃあその人ここに呼んでよ。今すぐ」
「無理だ、今、お前に魔法を封じられてるから呼ぶ方法がない」
「わかった、一旦解除してあげるから、その人呼んでよ。先に言っておくけど逃げようとしても絶対に逃さないからね」
アークはメンザスの魔法封印を解いた。
メンザスは【テレシーバ】で炭鉱に向かったをもう一人の仲間を呼びだした。
「グリムか、勇者を見つけた、すぐ戻ってきてくれ」
「わかりました、今行きます」
テレポートのゲートが開き、中からグリムと大量のモンスター達が現れた。
「(な、なんだこの凄まじい邪悪な気は…うっ、あそこに落ちているのはドドンゴ!?)メンザスさん、一体…その魔物は……お方はどなたですか?それに勇者はどこにいるのですか?」
グリムも一瞬でアークの大き過ぎる邪の力を感じ取った。
「ヤベェ、何だあいつは。逃げよう、早く逃げよう。でも勝手に逃げたら2人に殺されるぞ。でも逃げなかったらあいつに殺されるぞ!どうする?」
グリムの後ろに居たモンスター達もアークの恐ろしさを感じとりすぐにでも逃げ出したくなっていた。
「キミがもう1人の仲間か…その前にうるさいな君達。君達も僕の村を襲ったんだったよね」
アークは左手をモンスター達に向けてそのまま上に挙げた。
「うわぁ、なんだ!?助けて体が…」
モンスター達の体が宙に浮き出した。
その中の一体が更に高く浮かび上がり体の周りに黒い霧が纏わり付いた。
「た、たすけてくれ、俺は高いところが苦手なんだ…」
アークは掌を握った。
すると黒い霧が締め付け始め、どんどんと強くなっていった。
「く、くるしい…助け…ぐぇっぶひゅ……」
締め付けに耐えられなくなったモンスターの体は果物を握り潰したかの様に弾け飛んでしまった。
弾けた破片が下に居た他のモンスター達にかかった。
「うわぁぁ、助けてくれぇぇ、殺される!!!」
モンスター達は一層パニックになった。
アークは再びモンスター達に左手を向けた。
今度は少し力を入れ漆黒のオーラを手に纏わせながら上に挙げ掌を握った。
すると1体だけではなく次々とモンスターが浮かび上がって行った。
そして次々と弾け飛んでいく…。
「メ、メンザスさん、あれは一体!?勇者を見つけたというのは嘘ですか?なぜあの魔物は我々を攻撃してくるのですか?教えて下さい」
モンスター達が次々と殺されて行く光景を前にグリムは焦り気味にメンザスに詰め寄った。
アークは表情一つ変えずただひたすらモンスター達を殺して行き、その場にいたすべてのモンスターを殺すと、先ほどの話を再開した。
「さて、お話中悪いけど、キミ名前は?」
アークがグリムに冷たく問いかける。
「グ、グリムです。貴方はどちら様ですか?」
「僕はアーク。ずっとこの村でみんなと暮らしてたんだけど、キミ達が壊しちゃったからもう誰も居ないし住めなくなっちゃった」
アークのその言葉を聞いた瞬間、グリムの体は震えだし、自分のすぐそこにある死を嫌でも意識し始めた。
「貴方が勇者なのですか?」
「勇者?違うよ、僕は普通の村人だよ。でもキミ達のせいでこんな姿になっちゃったよ」
アークの冷たい表情がほんの少しだけ悲しみに崩れた。
「じゃあ次にダムドラムだっけ?そこの場所を教えてくれるかな?」
「あぁ、ここから南西に30km程行ったところにあるカジャの森という森の中心に古い社がある。その社の扉を開くと鏡がある以外は何もないように見えるが、結界が張られているだけで、鏡に手を入れればそのままダムドラムの入り口に繋がっている。さぁ話したぞ」
「わかった、ありがとう。お礼にどちらか一人この場から逃がしてあげるよ…そうだねぇ、二人で戦って、勝った方を逃してあげる。メンザス君の方が強そうだからハンデとして魔法を使えない状態で戦ってもらおうかな」
「わかった、生き残った方がそのまま逃げる。約束だ、いいな?」
「うん、いいよ!約束するよ」
アークは再びメンザスの魔法を封印した。
「ちょっと待ってください、幾らメンザスさんが魔法が使えないからといって私が勝てるわけがない。それに私も魔法はテレポートくらいしか使えないからハンデになりませんよ」
グリムは、アークに比べれば圧倒的に劣るがメンザスの強さに自分が叶うわけがない事は分かっていた。
「じゃあ、負けないように頑張れば良いと思うよ。 はい、じゃあ始めてぇ」
アークの開始の合図と共にメンザスは短剣でグリムに斬りかかった。
「グッ!」
メンザスの短剣はグリムの鎧で覆われている左腕を鎧ごと切り裂いた。
尚もメンザスの短剣攻撃がグリムを襲い、グリムは腰に拵えていた剣を抜き、メンザスの攻撃に対抗し始めた。
短剣が突き立てられる度に剣を使い、見事に全て弾き返して行った。
それからしばらくの間、短剣対剣のぶつかり弾き合う音が辺りに響き渡っていたが、メンザスが剣を弾いた隙にグリムの腹に鎧の上から強烈なパンチを一撃入れた事により音は止み打ち合いが終わった。
グリムは両膝をつき腹を抑えながら倒れ込んだ。
その隙に首の後ろに目掛けて短剣で攻撃し、グリムを殺した。
「おめでとう、君の勝ちだね!じゃあ約束通りこの場から逃がしてあげるよ!」
アークはメンザスの魔法封印を解除した。
メンザスは解除と同時にテレポートでその場から逃げ出した。
「あら、もう飛んでっちゃたよ。早いなぁ」
「うううう…」
「あれ、グリムって奴まだ生きてるじゃん…」
「とりあえずここまでくれば大丈夫か。 クソゥ、悔しいがあいつにはどうやっても勝てる気がしねぇ。魔王軍に報告に行っても殺されるのが関の山だ。 このまま逃げて何処かの街でも襲ってそこを根城にするしかないな」
「あ、居た居た。 これ僕の村に忘れてて、すっごい邪魔だから返しに来たよ」
テレポートでアリキタリナ村から離れ、上空を飛行していた所に突如としてアークが現れ、忘れ物を届けに来たことをメンザスに告げた。
「な、なんだ忘れ物とは!?」
メンザスはいきなり現れたアークに驚き、もうどこに行ってもこいつからは逃げられないのではと思った。
「はい、これだよ」
メンザスの真横にゲートが現れ、その中からドドンゴ、グリム、モンスター達の死体の残骸が次々と出てきた。
よく見るとグリムはまだ生きており、両手両足が無く、自分の剣が背中から突き刺さった状態で肺が潰れており呼吸がままならないようで苦しんでいた。
するとメンザスの周りに黒い霧が現れ纏わり付いた。
「じゃあ返すよ」
「おい、なんだそれは、ちょっと待ってく…ゔぇ…ゔぇぇぇぇぇ」
なんと、その残骸達がメンザスの口の中から体の中にどんどん送り込まれいった。
苦しさのあまり必至にもがこうにも黒い霧のせいで体が動かない。
グリムの体も生きたままの状態から細切れにされ、メンザスの中に入れられていった…。
「ゔぇぇぇぇぇ、ぐうぇぉぉぉぉぉぉ」
メンザスの体はどんどんどん膨らんでいき、そしてついに。
体の中から弾け飛んでしまった。
そのまま死体の残骸達と共に地上に落ちていった…。
「ちゃんと忘れ物返したからね」
アークはアリキタリナ村に戻って行った。
第6話に続く
日々、勉強中です。