第二の魔王誕生編 1-2 モンスター襲来
よろしくお願い致します。
ここは現世とは異なる世界。
現世の者からは異世界と呼ばれ、こちらの世界の者からはシルヴィアーナと呼ばれる世界。
この世界のアリキタリナ地方にある村、アリキタリナ村に一人の少年が居た。
名を〈アーク・セイン〉と言う。
アークは小さい頃からこのアリキタリナ村で育ち、中性的な容姿でとても人見知りな性格であるが、村人もみんな優しく長閑で幸せな生活を送っていた。
村も田舎の村ではあったが、近くには大きな炭鉱があり、その炭鉱で取れる鉱石の純度が高く、強力な武器が作れるという事でとても人気があり、遠方よりわざわざ買いに来る者も少なくなかった。
その為、田舎の村にしては大きく、村人皆がそれなりに豊かな生活を送る事が出来ていたのであった。
しかし、その長閑な生活は突然終わりを告げる事となる。
モンスターの襲来と共に…。
「お父さん、さっき祠の方で不思議な光を見たんだ!ちょっと見に行ってくるね」
アークがすぐそばに父親に話しかけた。
祠は村から炭鉱がある方向とは逆に歩いて20分程の距離だ。
「不思議な光?俺は気がつかなかったな。わかった、最近ここら辺でもモンスターが出るようになったからな、祠付近も沢山出るかもしれない。気をつけて行くんだぞ!武器と防具もしっかり装備していけよ!【回復草】は持ったか?あと、いざという時に村にワープして戻って来れるように【テレポー草】も持って行け」
【回復草】体力を50ほど回復してくれる 使用可能回数 1回
【テレポー草】離れた場所にある【テレポー石】の元にワープできる 使用可能回数 1回
【テレポー石】自分の血を登録する事で自分専用のワープ先として登録ができる 登録は一度に1つのみで、書き換えも出来ない為、ワープ先を新しくしたり、無くす、壊わすなどした場合は新たに別の石に登録する事で更新する事ができる。その場合、前の石は効力を失う。
アークのテレポー石は自分の部屋に置いてある。
アークの父親〈カザン・セイン〉が力のある太い腕を上げ大きな手でアークの頭を何回も撫でた。
「大丈夫だよ、僕だってもう12歳なんだよ。それくらい心配しないでよ!!…テレポー草も持ったけどもさ」
長らく子供を授かる事が出来なかったカザンは、アークをやっと出来た我が子だと思って大事に育てて来た為、ついつい過保護になってしまっていた。
アークも文句は言うものの、大事に育ててくれた両親が大好きでたまらなかった。
「じゃあ行って来まーす!」
「おぅ、用事が済んだら早く帰ってこいよー」
アークは祠に向かって出発して行った。
カザンは心配する気持ちもあったが、祠に向かって歩いていくアークの背中を見てどこか嬉しい気持ちもあった。
それから10分ほど時間が経った時のことだった…
突然、村の入り口の方で大きな爆発が起こり、沢山の足音が軍隊の行進のように揃ってこちらに向かって来る音がした。
「な、なんだ今のは、村の入り口の方から聞こえたぞ!!」
「み、見ろ!!煙が上がっている!!」
村の中央広場に居た村人が入り口方向に指を向ける。
次の瞬間、入り口方向から村人が叫びながら中央広場の方に走って来た。
「モンスターだ!モンスターが攻めて来たぞ!!」
それを聞いた他の村人達は一斉に村中に散り、他の住人にも聞こえるように走りながら大声で伝え回った。
「大変だ!!モンスターが攻めて来たぞ!みんな逃げるんだ!!」
村中は一気にパニックになり、さっきまでの長閑な雰囲気が嘘のようだった。
「アークッ!アークはどこ!? あなた、アークは何処にいるの?」
アークの母親〈アイラ・セイン〉が辺りを見渡しながらアークを探していた。
逃げ惑う村人の中にアークの両親もいた。
「アイラ、早く逃げるぞ!!アークなら、さっき裏の祠の方で不思議な光を見たと言って出かけたから暫くは戻って来ることはない」
カザンがアイラのか細い腕を掴みながらそう伝えると
「良かった!それならばモンスターに見つからなくて済むわね」
アイラは安心してカザンと一緒に村の奥に向かって走り出した。
「ハァハァハァ、とりあえずここまで逃げて来たけど他のみんなは無事かしら?」
村の一番奥で息も絶え絶えなアイラが辺りを見渡した。
殆どの村人が奥まで逃げて来ていた。
そこには白髪で長い髭を蓄えた村の村長〈ヨーゼフ・ガルシア〉の姿もあった。
ヨーゼフは一言つぶやいた。
「もしかしたら、アークを狙って来たのかもしれないのぅ」
「アークを!?」
その場に居た村人が一斉にカザンとアイラの方に顔を向けた。
「なんでアークが狙われるんですか!?」
カザンとアイラが口を揃えてヨーゼフに問いかけた。
ヨーゼフは、神妙な面持ちで
「アークはおそらく勇者の後継者として産まれたのじゃ。あの祠は昔から勇者がこの世界に誕生する時に、別の世界から繋がるゲートになると言う話を先代の村長に聞いた事がある。お前達がアークを祠から連れて帰って来た時、先代から聞いていた勇者の話をしようと思ったが、長い間子宝に恵まれず、あの日も祠に子供を授かるよう祈りに行ったのを知っておった。勇者はやがてこの村を離れ、魔王討伐に向かわなければならないのじゃ。血の繋がりは無くともやっと『我が子』と言う存在が出来たのに、勇者としていずれは旅立ってしまうかもしれない事は分かっておったが、中々言い出せんかったのじゃ…。おそらく今こちらに向かっているモンスター達は魔王の使いで、勇者がまだまだ未熟なうちに始末しようとしているのじゃ」
「ア、アークが勇者…信じられない…」
村長が話し終えると、待ってましたと言わんばかりそこに居た村人全員で口を揃えて呟いた。
カザンとアイラは突然の事実に言葉を失ったが、しばらくして二人でお互いの顔を見つめ合って小さく頷いた。
「『良かった。』すごく驚いたけど、嬉しい。アークが勇者であろうと魔王討伐の為、いつかはこの村を出て行ってしまう定めであろうと私達の可愛い息子であるあ事に変わりはないです。寧ろ誇りに思います」
2人は何か覚悟を決めたかの様なスッキリとした表情をしていた。
「幸い、アークは今、祠で不思議な光を見たと言って出掛けています。私達で少しでも時間を稼ぎます、その間に誰か脚の早い方、アークが戻って来る前にそのまま逃げる様に伝えて来てもらえませんか?」
「アークはテレポー石を持ってるから、万が一ワープして戻って来ちまったら村の中央にある俺たちの家に戻ってきてしまう。聞いた話だと家を一つ一つ調べていたみたいだから、もしモンスターが家の中にいる時にワープして来ちまったら…やべぇ。だからその前に伝えて欲しい」
二人が村人達にお願いをすると、一人の少年が手を挙げた。
「わかった、俺が行くよ!」
少年の名前は〈イーライ・カセ〉
アークとは小さい頃からの仲の良い友達で、1つ年下のアークを弟のように可愛がっていた。
「イーライ…ありがとう!」
カザンとアイラが深々と頭を下げた。
「やめてよ、おじさん、おばさん!
俺だってアークが勇者だなんて今でも信じられないけど、俺の大事な友達である事に変わりはないんだから」
「俺が急いで祠に向かって『何があっても絶対にアークを守る』だからおじさん、おばさん、時間稼ぎなんかしないで村の裏側から早く逃げてよ!村の裏側に出入口があることはバレてないみたいだから。かーちゃんもとーちゃんも他のみんなも早く逃げて!」
イーライの両親もその場に居た。
「俺たちは大丈夫。こうみえても昔はよくカザンと冒険に出て色々なモンスターと闘ったりしていたんだぞ」
イーライの父親〈ロン・カセ〉が豪快に笑う。
「イーライ、心配してくれてありがとう。でも大丈夫、お前の親父が言ったように昔はよく冒険していたものだ。しかし懐かしいな。またモンスター相手にひと暴れする事があるとはな」
カザンもガタイの良い体を揺らしながら笑った。
「俺たちも協力して闘う、だから安心して早くアークの所に向かってくれ」
他の村人達も覚悟を決めて、イーライをアークの事を託した。
「だが、闘うのは男達だけで十分。女、子供、爺さん婆さんは村の裏口から逃げてくれ。残った者でモンスターを一掃してやろう!!!」
カザンがそう言うと村の男達は覚悟を決めた様子で、闘いの準備を始めた。
アイラやイーライの母親〈キャロル・カセ〉や他の女性達は男達の足手まといにならないよう、私達も一緒に闘うとは言わず、自分の旦那や息子達が心配で仕方がなかったが、子供やお年寄り達と一緒に逃げる事にした。
「さぁ、イーライ早くアークの所に行って、逃げるよう伝えてくれ!心配して村に戻ろうとしないよう、アークには村のみんなは全員避難したと」
イーライの肩をポンっと叩くカザン。
その横でアイラとキャロルが笑顔で立っていた。
「イーライ、ありがとう。気をつけて、そしてアークをお願いね」
「イーライ、あなたも気をつけなさい。また後でとーちゃんと3人でご飯食べましょ!」
キャロルはイーライをギュッと抱きしめた。
「わかった、行ってくる!みんな絶対に無理しないで危なくなったら逃げてね!とーちゃん、かーちゃん、オレ行ってくるからね!!」
イーライは全力で村の裏側に向かって走り出した。
「イーライ頼んだぞー!!」
ロンとキャロルは手を取り合い、走り去るイーライの姿を見送った。
イーライは手を挙げ、両親の声に応えながら村を後にした。
イーライが村を出て間もなく、女性、子供、老人の避難が始まった。
「アナタ、気をつけてね…絶対に無理しないで。アークを授かって、3人で平和に暮らせて幸せだったね。これからはしばらくは2人になっちゃうけど、いつかアークが魔王を倒して帰ってきたらまた3人で一緒に暮らしましょ。だから、絶対に死なないでね!!」
アイラはカザンに抱きついた。
「約束する、無理しないで『必ず生きてお前を迎えに行く』から!!」
カザンもアイラをその大きな体で包み込むようにギュッと抱きしめた。
ロンとキャロルもお互いギュッと抱きしめ合い、暫しの別れを悲しんだ。
「皆の者、ワシだけ先に逃げてしまってすまない。皆が言った通り、無理だけはせんでくれ」
先に村を出るヨーゼフが申し訳なさそうにしている。
「気にしないで下さいよ!また後で勇者の話しでも聞かせてください」
と、村人達が笑顔で答えた。
他の村人もそれぞれに別れを告げ、みんなで村の裏側に向かって行った。
それから2分ほどでモンスター達が男達のところまでやって来た。
「き、来たぞ、みんな気をつけろ」
「すごい数だ…」
「よし、行くぞぉぉぉ!」
男達がモンスターの群れに立ち向かおうとしたその時だった、
男達の背後から何かの物体が飛んで来た。
その物体は村で収穫されるかぼちゃの様に少し重さがあるようで、地面に当たると少し跳ねながら転がって男達の前で止まった…
「えっ!!?」
第3話につづく
素人の稚拙な文章の羅列にお付き合い頂きありがとうございます。本当に。
何とか読んで頂けるように頑張ります。