格闘技の水抜について
格闘家やフィットネス競技者を批判するものではありません。
一生懸命に競技に打ち込む彼等がより安全に競技を続けられるように改善をしない、競技団体側へのアンチテーゼです。
年末の大晦日格闘イベントで、ブックやブック破りがあったと騒動になり、やっとそれも落ち着いて来たので、私としてはこっちの方が問題だよって思ってることについて、お話していきます。
年末の格闘イベントの前日計量の前日に、団体のエース級の選手がまだあと5キロほど絞らなければいけないと明かし、翌日の計量までに行ったハードな水抜の方法を動画公開しました。
この動画は再生数もいいねもバズっているようで、コメントなども、プロ格闘家のストイックに追い込んでいく姿に感動したなどの言葉が寄せられたようです。
私は動画は未見なんですが、サウナスーツを来て、サウナに入り、その後、トレッドミルなどのマシンでランやバイク漕ぎを繰り返していたようで、本当に凄い精神力だと思います。
ただ、一つ思うのは、こうした格闘家の水抜を礼賛していいのか、という疑問です。
件の選手について言えば、団体側のマッチメイクが毎回のように遅く、条件などもばらついているために選手の準備期間が短くなるせいもあるでしょうから、選手だけの問題ではありません。
しかし、多くの格闘技において、こうした水抜が行われている現状はありますよね。多くの現役や元格闘家の方が減量の実態について語ってくれています。
水抜とは何か。水抜を禁止すべき理由を語って行きます。
水抜とは何か
私たちの身体にある脂肪は水分と連結しています。
ボディビルダーが減量の最終に水抜するのも、皮下水分を減らして筋肉を浮き上がらせるためですね。
体内の脂肪に蓄えられた水分を減らすだけでも、5キロくらいは体重が落ちるんですね。普段からそれほど体脂肪率が高くは無いだろう、冒頭の選手が1日で落としきったことでもわかると思います。
ダイエットなどでも、最初はこの水分が減るため、比較的早く体重が落ちて行きますが、ある程度すると身体の維持に必要な部分で保持する機能が働くこと、脂肪そのものを落とすのは難しいことなどから、体重が落ちにくくなりますね。
格闘技やボディビルダーは脂肪を落とした上で、必要な水分を削り落として体重を減らすんですね。
水分を取らずにサウナに入る、水分を取らずにトレーニングをする。血中の水分が減ればドロドロ血になって、様々な健康リスクがあるため、血液をなるべくドロドロにしないために、塩抜きなんかもしますね。
糖質を制限して、筋肉内のグリコーゲンを枯渇させて身体を萎ませて、格闘技であれば、前日計量のあとの糖質、水分摂取で体重を戻し、ボディビルダーは制限した糖質で萎ませた身体に一気に糖質を入れることで枯渇して飢餓状態の筋肉が限界を超えてグリコーゲンを溜め込むことでパンプアップされますね。
このように、体重や体型をコントロールする手段として、水抜は使われています。
水抜を禁止すべき理由
結論、最悪、死ぬからです。
アジアの総合格闘技最大の団体OneChampionshipは所属選手が過度の水抜より死亡したことで、水抜を全面禁止しました。
ボクシングの認定団体ではIBFが前日計量と当日計量で10ポンド以上の増加があれば失格となりますね。
ボディビルの世界でも昨年、IBBFプロの女性選手がトレーナーからの過剰な水抜指示に従って大会当日に死亡する痛ましい事件がおきました。
死亡することは無くとも、脱水症状を故意に引き起こすことを繰り返せば、深刻な後遺症が起きることも考えられます。
また、健康面のリスクとともに禁止すべき理由として、競技の公平性を担保出来なくなることもあると思います。
何のために計量を行い、体重制限しているのか、それは体重差によるパワーやスタミナの違いを考慮して、なるべく公平性を保つためです。
にもかかわらず、前日計量から10ポンド以上、約5キロ近く増やしてしまえば、階級の意味がなくなりますよね、だからこそ、IBFは当日計量も行っている訳ですが、本来なら選手の安全のために前日計量しているものを、過度の減量からのリバウンド禁止のために当日計量をするのは皮肉としか思えないんですよね。
さて、重たい話ばかりなので私的、笑えるような笑えない減量にまつわるお話を一つ。
元ボクシング世界チャンピオンの具志堅用高さんは辛い減量のあと前日計量が終わった後に食べるアイスクリームが大好きだったらしいんです。
計量が終わったらレディボー○ンみたいなでっかいカップのアイスクリームをひたすら食べるんだ。
それが減量のモチベーションであり、それで力を得て翌日の試合に勝っていたらしいんですが、最後の防衛戦の前日、計量が終わってアイスクリームを食べようとしたら、スタッフに大事な試合前にお腹を壊してはいけないと取り上げられてしまったそうで、本人曰く「アイスクリームを食べていれば勝っていた」(笑)
ただ、これも一概に笑い話に出来なくて、ようは具志堅用高さんはアイスクリームに含まれる水分、乳脂肪分、糖分を摂取することで効率よく、減量で失われたスタミナを回復し、翌日の試合までに疲労を軽減していたのかもしれないので、アイスクリームを食べていれば~ってのはあながち間違いでも無いかもしれません。
格闘技の世界でも、ベストの体重を大きく下回る階級で戦うことをせず、なるべく減量しないことをトレーナーやジム関係者が推奨すべきだと思っています。
勿論、選手層の厚い階級を避ける、複数階級制覇を目指すなど、それぞれに事情はあると思いますが、無理な減量はマッチメイクの間隔を長くし、トータルの試合数を減らすことにもなります。
減量がきつくなければ、試合間隔も短くでき、スタミナなどに不安を抱える心配も減ります。なにより、試合後の回復も早いと思うのです。
厳しいフルコンタクト競技の世界でまさしく身を削って戦う選手たちが少しでも安全にキャリアハイに挑めるように、団体側がしっかりとルール作りをしてほしいですし、見てる側も安易に水抜を礼賛しない姿勢が大切だと思います。
水抜とは関係ありませんが、
相撲なんかも、ガチ相撲を推奨するのであれば年6場所4巡業15日制を改めると同時に、負傷休場した力士への番付保障を考えていくべきですよね。
負傷休場した翌場所が角番とか、頭おかしいと思わないのかなって、昔は星を勝って角番脱出があったかも知れませんが、それを良しとしないなら、興行の数を減らすなり対策すべきですよね。
フルコンタクト競技でしかも無差別階級、で2月に一度15日連続って、格闘家からしたらクレイジーだと思うんですが、本エッセイの内容含めて、格闘経験者の意見を聞いてみたいですね。