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１　プロローグ

「全国高校野球選手権大会、東東京大会、葛西学園高校ベスト4までアウトあと1つ！」

　立花楓（たちばな・かえで）は帽子を取ると、後ろで束ねていた髪をほどいて天を仰いだ。

（大丈夫！私のシンカーは世界一！）

　心の中で呟く。

「マウンド上はベスト8に唯一残った女子選手、立花楓3年生」

　大きく息を吐いて、一度動きを止める。

「2対1、ツーアウトランナー２塁、カウント3-2、セットポジションからサイン決まって…」

　左腕のアンダースローから放たれた白球は、右打者の外角から真ん中に甘く入るかに見える。

　バッターはここぞとばかりにボールを引っ張りにいく。

　と、ボールは突如バットを避けるように右打者の外角へ沈む。

　パスン、と力の抜けた音を立て、天を向いたキャッチャーミットにボールが収まる。

　一瞬の静寂の後、球場が大きな歓声に包まれる。

「立花投手、女子選手初の東東京大会ベスト4進出！」

　満面の笑みで両手を高く掲げ、男子と女子両方からなるチームメイトと喜びを分かち合う少女の姿がそこにあった。

※序章について

序章は世界観の説明です。

お急ぎの方は第1章から読んでもお楽しみいただけますが、序章を読んだ方が主人公やチームのことがわかってより楽しめます。