魔法が使える少女ー2
「お前なんで魔法使わないんだ?
それだけ余裕ってことかぁ?
ならこれでどうよ?
レベル21【パワーアップ】」
レベル21【パワーアップ】は自分の力を2倍にする魔法である。
ルシキの様に全ての魔法使いがウォール系の魔法を使えるという訳ではない。
ウォール系の魔法を使えない魔法使いは身体能力を上げる魔法を唱えてから戦闘を始めることが多い。
「これでどうだぁ!」
アニキと呼ばれた男はフェンに向けて再度杖を振り下ろす。
威力は先程の倍であり、一般の学生の身体能力を100と見た場合、身体能力がレベル5【ベースアップ】で1.5倍、力がレベル21【パワーアップ】でさらに2倍になる。
力の面でみると戦闘開始前より3倍になる。
フェンが130〜140に当たるので学生レベルでもおよそ2倍の差がつく。
アニキと呼ばれた男は大人なので実際は更に差が出てしまう。
つまりフェンが純粋な力比べで勝つ事は不可能になった。
「甘い!」
しかしフェンは頭めがけて振り下ろされた杖を自身の剣で右側へ受け流し、その勢いで相手の右肩を斬りつける。
「ぐぁぁ!
痛えなぁぁ!!」
アニキと呼ばれた男は右肩の出血を手で抑えながらフェンを睨みつける。
ダメージはあるがそこまで深い傷ではない。
フェンも息を整えながら相手にバレない様に心を落ち着ける。
「魔法を使わなくても強えじゃねぇか‥!
レベル22【ガードアップ】」
レベル22【ガードアップ】は自分の防御力(打たれ強さ)が2倍になる。
防御力以下の攻撃は生身ではダメージがあってもガードアップを使っていればダメージが半減し、怪我の程度も半減し、魔力次第で更にダメージを抑えてくれる魔法だ。
身体が2倍硬くなるイメージの魔法とフェンは考えている。
この瞬間にフェンの勝機が絶望的な物となる。
手下風の男が戦闘に参加せず、1対1で更に接近戦で戦えた為ギリギリ勝機はあったが、これだけ補助系の魔法を使えたら勝利は難しい。
仮に相手が魔法学校の生徒であってもここまで補助系の魔法を使われるとひっくり返すのは不可能だ。
それはフェンが今までの戦歴が101戦101敗である事が物語っている。
しかしこれは実戦練習ではない、敗北=死である。
それはフェンも充分に承知している。
「お前学生にしてはやるじゃねぇか。
魔法も使わず大した物だぜ。」
「それはどうも。
僕の友達も解放して頂ければこれ以上はやりませんよ。」
「こっちもそういう訳には行かないんだよなぁ!」
「いけぇアニキィ!」
フェンに斬られ、まだ出血のある右腕でフェンに向かい杖を振り下ろす。
フェンは受け流す事はせず回避に徹する。
レベル22【ガードアップ】の効果を理解し、今の自分では大きなダメージを与える事が出来ない事がわかっている為だ。
相手のスタミナ切れを狙う作戦に切り替える。
フェン自身も相手が殺意を持って攻撃してくる戦闘をするのは初めてである。
身体的にも精神的にも疲れない訳がない。
フェンにとって絶望的な第2ラウンドが開始する。