魔法が使える少女ー1
フェンは魔法学校の寮に住んでいる。
フェンが特別という訳ではなくほとんどの生徒が寮に住んでいる。
また家から登校する生徒もいる。
魔法学校と寮は近くにあり、せっかく寮に入っているのに学校まで遠くて登校が大変になるという事はない。
フェンが魔法学校から寮に帰宅する途中で
「やめて!
やめてってば!」
「うるせぇ!
さっさとこっちに来いよ!」
「そうだそうだ!
暴れるんじゃねぇ!」
見た事がない2人組みが魔法学校の女子生徒を襲っていた。
フェンは正義感の強い人間である。
自分の実力と状況を冷静に天秤にかけてる事は出来るが、自分では対処する事が出来ない問題であっても見逃す事が出来ない。
「何をしてるんですか?」
その行動にフェンが魔法を使う事が出来ない事は関係ない。
ただ困っている人を放って置けないのだ。
「あ?
なんだよお前。
邪魔すんなよ?」
「そうだそうだ!」
「何の目的があってその子に話しかけているのですか?
その子は僕の友人なのですが。」
女子生徒のの名前を出す事なく2人組に目的を聞こうとする。
「俺たちは魔法研究者だ
魔法研究者って知ってるか?
まあ知らなくてもいいや、どうせお前は殺すしなぁ!」
「そうだそうだ!」
「魔法研究者?
よくわからないですね。
何を調べているんですか?」
こいつらは何でも喋ってくれると察したフェンは敵の情報を集める事にした。
「何をって魔法をだ!
俺ら魔法研究者は世界にどんな魔法があるか調べてるんだ!
その為に俺らみたいに色んなところを回って魔法を調べているって事だ!」
「そうだそうだ!
ってアニキそれ以上喋ると上の者に怒られそうですよ!」
俺ら‥か。
勝手に沢山話してくれた事から考えると、魔法研究者という組織がある事、2人組だけでなく他にも魔法研究者がいる事、恐らくこの2人は組織のメンバーだが下っ端である事を察したフェン。
次の思考はどうこの場面を切り抜けるかに移っている。
「それもそうだな‥。
よし、こいつはやってしまおう。
その後にこいつを楽しんでから上のやつに渡すとするかぁ!」
「そうっすね!」
「レベル5【ベースアップ】」
「レベル10【ガード】」
アニキと呼ばれた男がレベル5【ベースアップを、その手下風の男がレベル10【ガード】を唱える。
「いきなりですね。
まずは話し合いましょうよ‥って無理か」
フェンはどう切り抜けるかを考えながら剣を抜く。
「1人なら逃げ切れるんだけどそうは行かないんだよね、さあどうしようかな。」
フェンがいくら考えてもこの2人を倒せるビジョンが見えない。
1対1の実戦練習ですら勝ったことのないフェンが1対2の状況を打開出来るわけがないのである。
かといって逃げる訳にはいかない。
逃げるのならわざわざフェンから話しかける必要がなく、それ以上にフェン自身がそれを許さない。
「レベル9【ソード】
準備はいいかぁ!
いくぞぉぁ!!」
レベル9【ソード】は杖などの対象の物を剣のように切る効果を与える物である。
アニキと呼ばれた男が杖を構えながらフェンに突進して行く。
それを手下風の男が女子生徒を抑えながら見ている。
ギィン!という音と共に剣と杖がぶつかり合う。
「ぐっ‥。
力を抜いたらやられる‥!」
アニキと呼ばれた男はベースアップを唱えている。
フェンは日々鍛錬を重ねて他の学生よりもかなり高い身体能力を持っている。
他の学生の平均を100とするとフェンは130〜140程度の身体能力を持っている。
これだけの能力を持っているフェンだが、レベル5【ベースアップ】は自身の身体能力を1.5倍にする魔法である。
この魔法1つでフェンの努力を上回ってしまう。
しかもこの数値は学生で考えた時の数値だ。
相手は大人、当然学生よりも身体能力は高い。
いかに日々身体を鍛えているフェンであっても魔法で身体能力を底上げしている大人と力比べは無理がある。