魔法が使える少女ー6
フェンとニーナは医務室を出て寮へと帰る。
カルア先生が2人が襲われた事もあるからと先生と一緒に帰ってと強く押されたがフェンはニーナと話したい事がある事、仮にまた襲撃されてもニーナの魔法があれば何とか出来ると考えカルア先生の提案を断った。
フェンはニーナに何かあっても対応できるようにニーナの横を歩いている。
何があったか知らない人が見ればただカップルが歩いているような光景だ。
フェンはカッコいいより可愛らしく応援したくなるような雰囲気を持っている。
ニーナは可愛いという表現がぴったりでありカルア先生とはまた違った魅力を持っている。
そんな2人が歩いていれば絵になるが今は夜という事もあって誰も見ている人がいない。
「カルア先生って美人だけど何か怖いよね、私変なこと言わないようにずっと静かにしてたよ。
変な嘘ついたらすぐバレそうだったしどうやって倒したかと聞かれた時はヒヤヒヤしたよ。」
「そうかな?
確かにあの時は僕も焦ったけどカルア先生はとても優しいよ?」
「まああなたはそうなのでしょうね。
あとあなたに聞きたいことがあるの、ここだとあれだからあなたの部屋で話しましょう。」
フェンは突然の事で少し驚く。
魔法学校に入学してから1度も女の子を部屋に入れた事がないのだ。
しかしフェンも話したい事はある。
「僕の部屋でいいの?
ならそこで話そう。」
フェンは部屋に必要以上の物は置かない。
魔法学校では家具など生活に必要な物は支給してくれるので生活に困る事もない。
「質素ね‥。
何もなくてつまらないわ。」
ニーナががっかりしたような反応をするがフェンは気にする事もなくニーナに「適当に座っていいよ」という。
ニーナは少し周りを見た後にベットに座る。
フェンはニーナに向かい合う様に床に座る。
「じゃあ僕から質問だけどニーナはなぜレベル75【エンチャント】を使えるの?」
フェンの質問にニーナは少し嫌な顔をする。
「なんで使えるって言われても、同じ魔法を使おうとして不発に終わった人に言われると嫌味に聞こえるわね。
あなたも分かるとは思うけど、なんでって言われても使えるからよ。
むしろ魔法が使えないって言われていたあなたがエンチャントを知ってた事の方が驚きだわ」
嫌味と言われてフェンは少し困った顔をする。
「嫌味と取られたならごめんね、そんなつもりじゃなかったんだ。
僕は魔法を使えないけど何一つ魔法を知らないって訳ではないんだ。
だからいくつか魔法は知っていてレベル75【エンチャント】はその中の1つだよ。」
「ふーん。
まあエンチャントを正式名称で言ってる辺りそうなんでしょうね。
私が言えた事ではないけどレベル75って相当強力な魔法よ?」
魔法学校で初めて魔法を習う時に魔法の話をする時はレベルと魔法名の2つを言ってはいけないと教わる。
まだ魔法の使い方や自分の力量が分からない子どもの魔法の暴発によるリバウンド、仮に発動した時の周りへの被害を考えた為である。
その為魔法学校の生徒の殆どが魔法の話をする時にはレベルのみか魔法名のみを指すことが多い。
またしっかりと制御が出来る人は正式名称で魔法の話をする事もあるが、学生には推奨されていない。
フェンは魔法が発動してくれたらいいなという思いを込めて魔法を指す時には正式名称で呼ぶ。
それでも誰が聞いているか分からず、迂闊に言えないので正式名称で魔法を言ったのは久しぶりになる。
「僕の知っている魔法の中で1番レベルが高い魔法だよ。
ニーナはレベル75【エンチャント】を初めて発動した時にはリバウンドが怖くなかったの?」
ここでフェンは嘘をつく。
フェンが知っている魔法で1番レベルが高いのはレベル99【死者蘇生】であり、レベル1〜99まで知っているがこれをニーナに話してもニーナが第三者に言わないという確証もなければ、この情報がどこかから漏れて魔法研究者にニーナが狙われてしまう可能性もあるからだ。
そしてフェンがなぜレベル75【エンチャント】を使えるのかと聞いたのはリバウンドが怖くなかったのかと聞きたかったからである。
「‥まあ色々あったのよ。」
ニーナはフェンに顔を反らしながら答えた。
ニーナがこの話題にこれ以上触れたくなさそうにしたのでフェンはその話題をこれ以上しない事にした。