魔法が使える少女ー4
その瞬間フェンは冷静になる。
レベル75【エンチャント】は全ての能力を5倍にする魔法であり、能力を上げる魔法では唯一自分だけでなく自分以外の人にもかけることの出来る魔法である。
身体能力は勿論だが魔力や精神力、思考能力も5倍となる。
そのおかげでフェンは冷静さを取り戻す事が出来た。
5倍に伸びた思考時間の中でフェンは自分に起きた事を冷静に考える。
「この魔法はあの子が使ってくれたのか‥。
だからあの子が狙われたのかな?
でも今はいいか。
お陰でアイツらに勝つ事が出来る。」
先程まで絶望的な状況だったが今のフェンには焦りはない。
何故なら‥
「ぐぁぁぁ!!」
「うっ‥」
身体能力が5倍になったフェンに魔法使いが接近戦で勝てるわけがないのだ。
「うん。
体が軽い。
思ってた通りだね。」
先程まで苦戦してたとは思えないほどあっさりアニキと呼ばれた男と手下風の男を倒した。
そして2人が逃げないようにしっかりと拘束する。
その瞬間魔法が解ける。
「おっと‥。
結構きついね。」
魔法が解けた瞬間今までの疲労がどっと押し寄せる。
しかしフェンが倒れる訳にはいかない。
女子生徒の保護と魔法研究者2人を魔法学校の教師に引き渡さなければいけない。
フェンの中で女子生徒の保護の方が優先順位が高い。
「大丈夫‥?
同じクラスだよね?
名前は確か、ニーナさんだよね。
ニーナさんのお陰で勝つ事が出来たよ。
ありがとう。」
「怖かった‥。
怖かったよぉぉ!」
ニーナは泣きながらフェンの元へ飛びつく。
フェンも避ける事なくしっかりと受け止める。
その後泣き止んで恥ずかしくなったニーナに突き飛ばされるが戦闘のダメージも残っているフェンはこれ以上騒がないように笑って過ごした。
傷だらけのフェンを見てニーナは慌ててレベル20【ヒール】を唱えるのであった。
「回復魔法ありがとう。
大分良くなったよ。
改めて同じクラスだから見た事あると思うけどフェンと言います。
今回はニーナさんのお陰で勝つ事が出来ました。
ありがとう。」
「ニーナでいいわ。
あなたの事は知ってるわよ。
魔法が使えないって有名だから。
貴方のお陰で助かった。
その‥ありがとう。」
「じゃあニーナって呼ばせてもらうね。
あとここから大事な話をするよ。
君がレベル75【エンチャント】を使える事、僕がレベル75【エンチャント】を知っている事、発動に失敗した事は誰にも言わない方がいい。
理由はわかるよね?」
「もちろんよ。
もう襲われるのは嫌よ。
レベル75だって人前で使ったのは初めてよ?」
「ならいいんだ。
誰が見ているかわからないから教員にも言わない方がいい。
手柄を取るようで申し訳ないけど、僕がニーナを助けようと不意打ちで2人を倒したって事にしておこうと思う。
その方がお互いの為になると思うんだけどいいかな?」
「それでいいわ。
実際倒したのはあなただもの。
‥それでいつまでその2人を置いておくの?
見るのも嫌なのだけど。」
「そうだね。
ここから1番近いのは救護室かな。
僕が呼んでくるから少し待っててもらってもいい?」
「い、嫌よ!
1人で待つなんて嫌。
なら一緒に行く!」
「わかった。
なら一緒に行こうか。」
2人はカルア先生のいる救護室へ向かう。
救護室へ向かう道でフェンは先程の戦いを思い出す。
「勝てた‥魔法という補助があったけど初めて勝てた‥!」
「どうかしたの?」
「‥ああ、何でもないよ」
そしてこれがフェンが対人戦で初勝利となる。
ニーナと出会った事でフェンの物語はここから加速する。