魔法が使える少女ー3
まずい
これが僕の今の気持ちだ。
あの男がレベル22【ガードアップ】を使ってからこっちの攻撃が効いている様子がない。
魔法の遠距離攻撃をされたらおしまいだけど、遠距離攻撃の魔法が苦手なのか接近戦のみで攻撃してくる為ギリギリ凌げている。
「オラオラ!
さっきまでの元気の良さはどこに行ったんだぁ!」
僕は攻撃を凌ぐので精一杯、隙をついたカウンターでも相手に大きいダメージは与えられない。
絶望的だ。
でもあの子を助けない限り僕に逃げると言う選択肢はない。
ーー魔法、使えるかな。
不意にフェンの頭に魔法という選択肢がよぎる。
フェンが最後に魔法の不発を確認したのがおよそ半年前。
フェンが魔法使いを攫う存在がいると聞いたのも半年前。
魔法が使えるか不発か確認するのも魔法を唱える必要がある。
またどんな魔法使いを攫っているかも分からない。
早朝と言えど誰が見ているかわからないので魔法が使えるかどうかの確認をするのをやめたのである。
「はぁ、はぁ‥いけるか‥?
でも不発になる可能性も‥。」
「何ブツブツ言ってるんだよ!
そろそろおしまいかぁ!」
僕は覚悟を決める。
「レベル75【エンチャント】!」
アニキと呼ばれた男は驚いた顔をしながら
「レベル75だど‥?
どんだけレベル高い魔法持ってるんだよ!」
と叫ぶ。
「レベル75はどんな効果なんだよ!
なあ、教えてくれよ!」
アニキと呼ばれた男は嬉しそうに僕に聞いてくる。
僕の使った魔法レベル75【エンチャント】は‥
失敗した。
いつも通り発動しなかった。
リバウンドも来ない、魔法を使っていないので魔力切れでもない。
「なあなあ!
どんな魔法なんだよぉ!
早く教えてくれよ!!」
血走った目で興奮したように聞いてくるが僕の耳には入らない。
「くそ、くそ、何でだよ!
何で発動しないんだ‥。
これさえ使えれば勝てるのに!!」
この状況をどうにかするには魔法しかないんだ。
おしまいだ。
そんな思いから本音が出てしまう。
「どんな魔法なんだろうな。
レベル75って。
なあお前も気になるよな?
早く知りたいよな?」
「アニキ!
早く知りたいです!」
アニキと呼ばれた男は手下風の男に興奮したまま話しかけており僕の話を全く聞いていない。
レベル75と聞いてから興奮が収まらない。
その姿は女子生徒が怯えずに見てられる物ではなかった。
「助けてよ‥。」
その一言で僕はハッとする。
守らなければいけない子がいる。
魔法が使えない事はいつもの事なのだ。
「アイツを捕まえて後でゆっくり聞くことにしよう!
お前も行くぞぉ!」
「わかりましたアニキ!」
そう言いながらアニキと呼ばれた男と手下風の男の2人がかりで僕に突進する。
2人がかりで僕に突進してくる事によって女子生徒の拘束が解かれる。
その女子生徒はそのままー
「レベル75【エンチャント】
これが使えれば勝てるんでしょ!
助けてよぉ!」
僕が不発に終わった魔法を唱える。