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春の歌会 2019

港にて

作者: 雪 よしの

「高校卒業記念旅行が、地元の”道の駅”とは。ボンビーすぎて、笑える」

「タクマ、今日は俺たちは本州から来た観光客って事で」

「芝居するってこと?ユウヤ。」


 港の横のにある道の駅。1階は海を見渡すテラスと売店、2階にはレストランがある。タクマ、ユウヤ、レンの3人が、足取り軽く、2階への階段をあがっていく。


 俺は、妹に旅行土産を買いに、売店に立ちよった。どうせ地元だし”カニセンベイ”なんてベタだけど、文句言いながら食べるだろう。


「すみません、今日は観光船はお休みですか?」


 イントネーションが独特で、外見が一見日本人。中国か台湾からの観光客の一人に声をかけられた。俺は地元民とはいえ、一応”道の駅のお客”なんだけどな。スタッフに見えたのだろうか。


「流氷観光船はもう出てないでしょう。3月も末なので、流氷は離岸してます。詳しくはあそこの案内所で聞いて下さい」


 その人は、バツがわるそうに、頭を下げて行った。


 流氷はじいちゃんが言うには、昔は嫌われ者だったそうだ、海が氷と閉ざされ、漁が出来ないからだ。近年、観光の目玉になってからは、価値が見直され、流氷情報がこまかく出されてる。


 流氷が去った海は、吸い込まれるように一段と青く、一見、どこまでも続いてるように見える。道も目印も見た目ではわからない。まるで俺たちのこれからのようだ。



 タクマは、獣医学部に合格。動物のお医者さんを目指すのか。大きなガタイだから家畜専門が似合う。


 ユウヤは、AIの研究がしたいそうだ。電子工学科に進む。


 レンは、臨床工学士の学院に受かってる。病院内の機械を扱う職業だそうだ。具体的にはよくわからないけれど。


 俺は、水産学部に進む。海に関して、をもっと良く知りたい。少し”魚君”入ってるかもしれない。


{ワタル!、ほたてカレー大盛注文しておいたからな}


 レンからラインが届いた。


 4人とも、同じ学年で科学クラブという大雑把な部活で一緒だった。”理系の事ならなんでもする”という部で、小さいロボットを組み立てる事もあれば、花や植物も育てたりした。時々、勉強を教えあい(宿題の答えを教えてもらうともいう)遊ぶ時も一緒。他の部活に比べると随分とノンビリ、3年間楽しかった。でも、これからバラバラの道を進む。


 こうやって道の駅でカレーを食べた事もいい思い出としてだけ残る。次に会う時は、また違う”4人”になってるだろう。できれば”すこし成長したな”と言われる自分になりたいが。



流氷去る

海の青さを焼き付けて

明日僕たちは ここを旅立つ

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― 新着の感想 ―
[一言] 道の駅でカレーを食べてる彼らの後ろで、耳をダンボにして会話に聞き耳を立てているおばちゃま気分で読んでしまいました。 君たち、頑張れよと、心の中でエールを送る私です。 すごくリアル感があって、…
[良い点]  つい先日、テレビで流氷が覆った港を見ました。  北海道のどこの海だったかは覚えていませんが、流氷が港一面に接岸していました。  本物を見たら感動でしょうね。  本編。  四人の若者がこれ…
[気になる点] タイトル 「港にて」 ではないでしょうか? ここは誤字報告が効かないところなんです(^_^;)
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