港にて
「高校卒業記念旅行が、地元の”道の駅”とは。ボンビーすぎて、笑える」
「タクマ、今日は俺たちは本州から来た観光客って事で」
「芝居するってこと?ユウヤ。」
港の横のにある道の駅。1階は海を見渡すテラスと売店、2階にはレストランがある。タクマ、ユウヤ、レンの3人が、足取り軽く、2階への階段をあがっていく。
俺は、妹に旅行土産を買いに、売店に立ちよった。どうせ地元だし”カニセンベイ”なんてベタだけど、文句言いながら食べるだろう。
「すみません、今日は観光船はお休みですか?」
イントネーションが独特で、外見が一見日本人。中国か台湾からの観光客の一人に声をかけられた。俺は地元民とはいえ、一応”道の駅のお客”なんだけどな。スタッフに見えたのだろうか。
「流氷観光船はもう出てないでしょう。3月も末なので、流氷は離岸してます。詳しくはあそこの案内所で聞いて下さい」
その人は、バツがわるそうに、頭を下げて行った。
流氷はじいちゃんが言うには、昔は嫌われ者だったそうだ、海が氷と閉ざされ、漁が出来ないからだ。近年、観光の目玉になってからは、価値が見直され、流氷情報がこまかく出されてる。
流氷が去った海は、吸い込まれるように一段と青く、一見、どこまでも続いてるように見える。道も目印も見た目ではわからない。まるで俺たちのこれからのようだ。
タクマは、獣医学部に合格。動物のお医者さんを目指すのか。大きなガタイだから家畜専門が似合う。
ユウヤは、AIの研究がしたいそうだ。電子工学科に進む。
レンは、臨床工学士の学院に受かってる。病院内の機械を扱う職業だそうだ。具体的にはよくわからないけれど。
俺は、水産学部に進む。海に関して、をもっと良く知りたい。少し”魚君”入ってるかもしれない。
{ワタル!、ほたてカレー大盛注文しておいたからな}
レンからラインが届いた。
4人とも、同じ学年で科学クラブという大雑把な部活で一緒だった。”理系の事ならなんでもする”という部で、小さいロボットを組み立てる事もあれば、花や植物も育てたりした。時々、勉強を教えあい(宿題の答えを教えてもらうともいう)遊ぶ時も一緒。他の部活に比べると随分とノンビリ、3年間楽しかった。でも、これからバラバラの道を進む。
こうやって道の駅でカレーを食べた事もいい思い出としてだけ残る。次に会う時は、また違う”4人”になってるだろう。できれば”すこし成長したな”と言われる自分になりたいが。
流氷去る
海の青さを焼き付けて
明日僕たちは ここを旅立つ