君は幼く、世界を知らない 2
人も寄り付かない森の奥深く、
普段なら明るい筈の森は、雲に隠れてしまい、薄暗い。
”それ”は突如として現れた。その瞬間、森の中がざわついた。
それは、人の形をしているが明らかに人ではない。
それは何かを探しているようで、辺りを見渡していた。
『………。』
一旦足を止め、足元にある土を払い除けた。
そこにあったのは七色の石がはめ込まれた石版。
『ふふ…、これであなたにお会いできます。我が君―――。』
雲の狭間から見えた月の光に男の顔が浮かび上がる。
男は、それを手に微かに笑っていた。
『…誰ですか、楽しい気分を台無しにするのは。』
男は、不機嫌そうに目を細められる。
「ここでなにをしている!」
そこに現れたのは、騎士の男であった。
『ああ、これはこれはガーシャーンの騎士様ではありませんか。』
「魔族がこんな所で何をしている。」
騎士の男は殺気をむき出しにして、目の前にいる男を威嚇した。
男は、やれやれでも言うかのようにため息を一つ。
『全く、散歩に来てはいけないのですか?』
「………」
『やはり、人間は野蛮ですね。』
―――まあ、それが面白いんですが。
男は不敵に笑いながら、歩き出した。
騎士は行かせまいと剣を抜く。
「……っく!?」
しかし、剣が抜けることはなかった。
男は手を振りながら、離れていった。
騎士は必死に動かすが体すら動かせずにいた。
「クソッ…くそおおおおおっ!!!」
騎士の叫びが森の中に響き渡った。




