君は幼く、世界を知らない 10
―――デウスは倒れていく彼女の姿が目に映った。
目の前が真っ白になっていくのを感じていた。
彼女の名前を叫ぶ、それでも届かない距離だ。
体の中に”なにか”が支配していくのが分かった。
これは怒りかはたまた愛しいものを守れない無力な自分を蔑んでいるのか。
だが、その”なにか”は確かにデウスの中で生まれた、そして力となった。
しかしその力はデウスの人の姿に留めることはしなかった。
黒の髪は赤く染まり、瞳も目の前の男と同様に真紅の瞳を持ってしまった。
デウスは動いた、男が反応する前に目の前に立つ。
攻撃を出すことはなかったが、その代わりユリアを素早く抱き抱え、安全なところに寝かせた。
『…、ほう』
男はかすかに笑った。
「お前を絶対許さない。」
デウスは斬りかかった。
男は笑いながら攻撃を避けてる、それは傍から見たら同胞の誕生を喜んでいるように。
一方その頃、カルラは連撃攻撃を避け続けていた。
それでも本気を出していないわけだが。
化物はずっと吠え続けている。
魔法を繰り出しながらこの窮地を脱することを考えいていた
叫んだデウスの方を見る。その姿はどんどん人の姿から外れていた、それはつまり人の理から外れることを示していた。
あれは、”魔族落ち”だ、彼はもう人間には戻れない。
少し不憫だと感じた。”アレ”になってしまうのは自分の意志だ。例外は存在する、例外とは元々一族の誰かがあちら側ということだ。彼は一体どちらだろうか。
まだあって数時間もしていない彼のことが分からなく結論が出せない。
そしてそのあとに少女の方を見た。
「!?」
驚いた、少女の周りから光が出ていたのだ。
少女は刺されたはず、そんな彼女から光が出ているのはおかしい。
手早く魔物を痺れさせ、少女のもとへ近づく。
「………これ。」
少女は辛うじて息をしていたのだ、確かに少女は心臓を刺されたはずだ、しかしその傷はどこにもない。
―――一体彼女に何が起きているのだ?