幼年期 3
どうにも安易なネーミングです。
あれから更に半年が過ぎ、レベルも順調に増えていった。
それと共に近接戦闘にも慣れ、獲物の獲得と共に、試したい魔法もある事が分かり……つまり、マジックボックスの存在である。
元々、転移魔法が空間魔法って認識だったので、それはあると思っていた。
ただ、確立させると余計な負荷になると思い、必要まではあえて使わなかっただけの事。
升目のイメージでアイテムが整理され、投入したアイテムは升目の1つを埋める。
頭に浮かぶ升目は20×20で400種類になっている。
重量は不明だけど、とりあえず入れるだけ入れてみようかと思ったんだ。
オークル…コボックル…オーガル…ウルフィル…ベアル…リザックル…ドラッカルはそれぞれ、
豚系、犬系、鬼系、狼系、熊系、ワニ系、竜系……なんかさ、小説に出てくる系の魔物なんだ。
他にも、ラビックル…ムースル…ホースル…カウル…ゴートル…シープル……どうにもラストに『ル』が付くみたいだ。
だからさ、最初は普通の動物で、魔物化したって証が語尾の『ル』じゃないかと思ったんだ。
後は魔物と動物の違いなんだけど、体内に魔石のあるなしだ。
魔物には心臓の隣に魔石……魔力凝縮物……が備わっている。
成分はどうにも血液凝固物って感じに赤黒い球だ。
キレイに洗った後でペロリと舐めてみた。
するとちょっと懐かしい味……そう、仄かな甘み。
興味のままに口に入れ、そのまま舐めていると実に良い感じ。
ちょっと甘い牛乳飴って感じかな。
かつて200日余り、飲んでいたあの赤い液体の味にそっくりなのだ。
あれって魔石を砕いて溶いた液体だったのかな?
これいいな。
面白い発見と共に、魔石はオレの嗜好品になった。
魔石を入れる袋も何種類かに分け、小さな魔石を嗜好品に位置付けた。
大きなのは砕かないと口に入らないからであるが、もしかしたら売れるかも知れないと。
後、解体の事だけど、それは城下を視探で視て覚えた。
うん、オレはどうやら王子っぽくてさ、だから比較的自由が効いたみたいなんだ。
それに最大限に甘えて自由に修練してたんだけどね。
魔法の研鑽と共に、身代わり君の開発にも成功した。
【代理】である。
魔物の素材を採った後のゴミから生成したそれは、オレそっくりにした生きた死体。
もっとも、オレが魔力を注がないとただの死体となり、そのまま放置するとミイラ化してしまう。
ともかく、そいつを設置してオレは城から抜け出した。
城下では精神系の魔法でまずは情報収集だ。
【暗示】【催眠】やれる事は何でもやった。
どうやら魔力を【供給】してやると快感に感じるらしく、寝ている奴に軽く流し込みながらその意識を探ったのさ。
質問のままに頭に思い浮かべるから、色々と情報を集めたんだ。
それにしても、寝ながらビクンビクンしていたが、あれってもしかして……
オレはまだ産まれて1年ぐらいだし、そんな欲望は感じないけど知っている。
だけど調査に有効だし、本人も良い思いをするんだからいいよね。
城から抜け出して、その間は身代わり君は生きた死体で眠ったままの状態。
全く反応は無いが、死んでいる訳じゃないように擬態させてある。
つまり、生きているように見えるだけの死体と言えば良いだろうか。
オレの注いだ魔力でそれを維持するのに10日。
その間に情報収集と素材売りをやっておかないとな。
いきなり追い出されて、商売がやれるとは限らないからさ。
もっとも、オレに金は必要なく、必要なのは物資だった。
なので物々交換を確立させ、必要な物資を集めていく。
人気なのは主に肉であり、素材はあんまり喜ばれない。
だから肉と物資の交換取引をやりつつ、狩りに修練にとこなしていった。
身代わり君を時々備え付けて……
味覚が心配な今日この頃。