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落ちこぼれ魔皇子  作者: 黒田明人
幼年期
5/17

幼年期 2

 


『あれから半年、あやつはもう……』

『今しばらく、今しばらくの猶予を』

『今孕ませておる。孕みし後にあやつの次が生まれし時、動けぬなれば……』

『何とか、それまでに』


昼間に目を開けるのは久しぶりだな。

周囲に誰も居ない時は開けてみたりしていたが、人が居る時に開けるのは初めてか。

視線が合うと感情がプラスに傾き、手をそろりと動かせば更にプラスに傾く。

ああ、オレが意地汚いから心配されてたのか? 

とりあえず寝返りを打ってみると、パタパタと報告に走る様子。

やれやれ、もうあの赤い飲み物は終わりになるのか。


『皇子が目覚めましてござりまする』

『ふうっ、やっと目覚めたか』

『ははっ』

『なれどの、余りに遅い目覚めじゃ。事によると……』

『それは我らが支えますれば』

『ふむ、まあ、磨いてみるが良かろう』

『ははっ』


起き上がると身体は少年の様相。

本当は飛んだり跳ねたり出来るんだけど、そろりそろりと床に降りようとする。

周囲の奴らは手を出そうとしては思い留まり、ひたすら凝視されているような。

そのまま床を踏みしめ、そろりそろりと歩く。

そこらを1周してまたベッドに戻り、寝た振りの継続……てか、夜がハードだからマジ眠いんだよな。

最近、魔物っぽい生物を何とか狩ろうと思って調べてんだ。


『皇子、初歩の儀、終わりましてござりまする』

『本来なら3日でこなす事じゃがの』

『これから、これからでこざりまする』

『あれの次が産まれ、抜かれたら交代じゃ』

『ははっ……致し方ありませぬな』


どうやら人間って訳じゃないらしい。

いくら何でも半年で少年の風体ってあり得ないし、それで歩くってのも更にあり得ない。

後、やはりあの赤い飲み物は無くなり、いきなり肉と野菜って普通の食事になっちまった。

離乳食も無しにいきなりとかさ、絶対人間じゃ無いって。

確かにもう歯は生え揃っているし、肉とか簡単に食い千切れる。


『皇子、初食の儀、終わりましてござりまする』

『ほお、肉を食いおったか』

『ははっ、力強く食い千切っていた模様』

『それとて10日もあればやれる事じゃがの』

『少しずつ、少しずつなれば』

『普通ならば既に、剣の稽古ぐらいはやれねばの』


昼はのんびり夜はハードに、オレの修練は続いていた。

特に深夜のハードスケジュールのせいか、昼間は昼寝主体ののんびりしたもの。

教わるままに全てを理解して頭の中に入れており、既に会話と読み書きはマスターしている。

だけどそれは表には見せない。

かつての出る杭は死刑って教訓が、オレに目立つ行為をためらわせたのである。


ある時、体内にもやもやした物を感じるかと聞かれた。

だけどもうそんな曖昧な感覚じゃなく、確固とした存在としての魔力を感じている。

それどころかオリジナル魔法の開発が、今の楽しみになっているぐらいだし。

だから正直に……


「もやもや? そんなの感じないよ」


ならば先に体力作りと言われ、最初は宮廷内の散歩からと……

既に探査魔法で知っているんだけど、直視はいささか様相が異なる。

ふむ、このすり合わせをやれば探査がもっと進化するか。

場面場面を探査の結果とすり合わせ、段々と詳細な情報になっていく。

それは良いのだが、体力作りの一環の最初のステップの散歩だよな。


オレはそいつを魔法の研鑽に用いていたんだけど、宰相達にはオレが、体力が無いから休み休み歩いていると思えたらしい。

なので次のステップに進む事もなく、オレは充分に探査魔法を磨く事が出来た。

その結果、探査は色々と進化して分岐し、地中探査魔法の【地探アースソナー】や、生命探知魔法の【命探ライフソナー】など。

後は設置した地点に人が近付くと警報として知覚する【警報コールソナー】などである。


そして遂に【視探リアルソナー】の確立。


もう目を瞑って歩いても、直視と変わらぬ情報が得られる。

しかもこれは周囲の明暗に関わらない。

だから深夜のトレーニングにこれは大いに寄与した。

そんなある日の事、遂に魔物を倒してみようと思った。


風魔法の概念に、ハンググライダーのイメージを足して、完成した魔法が【飛翔フライング】になる。

もっとも体感したのは高校の修学旅行の時でさ、すぐに突風が吹いて転落したんだけどさ。

まあそれはともかく、転落のイメージなんて含ませず、最初のふわりと浮かんだイメージだけを使ったのさ。

そうしたら実際に身体が浮き、後は操縦だけ習熟すれば良かったのさ。

生命探査で生物を探査し、得られた存在を詳細に確認する。

人以外の生物の確認……後は……


風刃エアカッター


武器が無いから魔法でだけど、風系のイメージで開発した。

透明な見えない風……つまり空気の刃って概念で、魔物の首を切断したんだ。

やけに簡単に斬れたのにびっくりしたけどさ。

そうしたら頭に鈴の音が響くんだ。

あれ、これってレベルアップ? 

じゃあさ、こんなのもやれたりするの? 


【ステータスオープン】


レベル   2

HP 100/100 

MP  40/40 


あれ、これがステータス? 

STRとか無いの? 

スキルは? 

魔法は? 

それにしても、MPが少なくないか。

まあ、レベル2だからかも知れないけど。

まあいいや、もっともっと倒してみるか。


イメージのままに風の切断魔法。

風刃エアカッター】でズバッと魔物の首が落ち、頭の中に鈴の音が……

レベル3になったけど、HP150 MP60だ。


どうにも地味だね。


その日から夜のハントも加わり、昼間はますます眠くなっていった。

朝、ベッドの中で軽く朝食を採り、そのまま昼過ぎまで眠り、目覚めてベッドの中で食事。

そしてまたしばらく眠って後に少し学び、夕食を食べて眠る日々。

だからもう散歩すら無くなった。


『あやつはまた寝たきりになったらしいの』

『急な運動で疲れたのでござりましょう』

『どうにも虚弱よの』

『またしばらく後には』

『実は側室が孕んでの』

『そ、それは、めでたき……』

『男児が産まれるようなら、そして抜かれるようなら』

『うっ……』

『交代させる』

『そ、それは……』



どうにも拙いですね。

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