表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちこぼれ魔皇子  作者: 黒田明人
幼年期
4/17

幼年期 1

彼は『出る杭は死刑』というのが教訓になっているようです。

 

どうだい、面白かったかい?


これがかつてのオレの経験さ。

だからまた世界から嫌われて、早々に退場になるかも知れないけど、やれる事はやろうと思っている。

学識の取得と身体トレーニング、後は技能習得。


そんなこんな思いながら数日が過ぎたんだけど、液体を飲む日々だったんだ。

どんな液体かって? それがさ、薄い牛乳みたいな感じでちょっと甘いんだ。

かつて体験した事があるような無いような、不思議な気持ちになっている。

相変わらず動かない身体だけど、少しずつ周囲の事が分かるようになってきたんだ。

目が開かないのに周囲が知覚出来るって変だけど、脳裏に周囲の風景が分かるようになったんだ。


その周囲なんだけど、どうにも日本じゃ無いんだよな。


確かにかつては時が戻るだけだったけど、今度は違う存在に生まれ変わったらしい。

そう思ったけど、生かされている間は何も言わずに耐えていようと思った。

オレは恐らく赤子の状態で、飲まされているのは母乳だと。


でもさ、赤いんだ。


ゴクリゴクリと毎日飲んでいる、その液体は赤いんだ。

ちょっと甘い、牛乳を薄めたようなその液体。

匂いも良い匂いがしてさ、それが匂うとメシの時間だ。


そうしてまたゴクリゴクリと……


飲む程に身体に力が満ちていき、目も開けられるようになった。

身体も動かせるようになったんだけど、やっぱり昼間は動けない振りをした。

そうしてひたすら飲んでは昼間は寝て、夜に動く日々を続けたんだ。


『あれはどうじゃ』

『まだ動けぬ様子』

『ワシの子だと言うに、あやつは……』

『はい、本来なればとうに動いて』

『ダメ元じゃ、動くまで飲ませるとするか』

『ははっ』


10の朝を越え、それでもオレは動かなかった。

確かに夜中に動いた感じでは、乳児ではあり得ないぐらいに動けた。

かつての身体能力を遥かに凌駕していると感じた……乳児なのに。

こんなのが知られたら……また前のようになったりしたら終わりだ。

それに、動けるようになればもう、あの赤い液体は終わりになるようだし。

だからオレは甘くて美味しい、その液体の摂取の継続を望んだんだ。


それにしても変な事が1つ。


排泄物が出ないんだ。

まあ飲むだけだから小水だけだろうけど、それが出ないんだ。

不思議な感覚だけど、出ないなら出ないで構わないと、ひたすら貪欲に飲み続けたんだ。

そう言えば、5の朝を迎えた頃、身体の中にもやもやとする存在を発見したんだ。

かつて……図書館で学識習得の合間に読んだ小説……

それはファンタジー系の小説だったけど、それも知識の中に足されている。


後は閃きだな……こいつ、もしかして魔力?


身体に循環させるとか書いていたから、それに従ってやってみたんだ。

最初は全然だったけど、少しずつ動くようになってきた。

だからなし崩しに思えたんだ。


ここは外国じゃなく、もしかしたら異世界かも知れないと。


20の朝を越え、今日も朝からゴクリゴクリと……

どうやら量が増えているようだけど、ひたすら全部飲み尽くしている。

やっぱり昼間は動けない振りをして、体内循環ばかりやっていた。

やればやる程に量が増えるような気がして、面白いからひたすらやっていたんだ。

動けない振りをしていても、オレが起きていると思ったのか、寝物語のように色々な話をしてくれる。

そういう話を聞き、国の歴史や情勢などを学んでいった。


目は開けなくても周囲の様相は分かるからね。


分かりましたか、の問いに対し、オレは『うう』と、返事をした。

だから周囲の奴らはオレが、動けないだけで昼間は起きていると思ったんだ。

その事も報告されたようで、だから後は動けるようになればって事で、追加の日々は継続になったらしい。

ちょうどその頃、訓練に最適な場所を発見して、夜な夜なそこで修練に明け暮れていたんだ。


魔法の知識も色々と教わり、呪文もいくつか教わった。

だけど、どうにも言い回しがおかしいと言うか……


『地獄の業火よ、我にその力の一端を顕現せしめよ』


最初聞いて、あれっと思ったんだけど、自分に顕現って自殺魔法か? ってさ。

『我が敵に』なら分からなくもないけど『我に』とか、どうにも変だ。


他にもある……水の魔法だ。


『天空を流れる水の魔女よ、大地の底に貫き流れよ』


これってどういう意味だろうね。

天空を流れるのは水じゃなくて風じゃないのかな。

大地の底に貫くとか、本当に意味不明なのだ。

呪文自体に意味は無いらしいんだけど、それもおかしな話だ。

オレのファンタジー系の情報源は、かつて読んだファンタジー系小説とサイト関連だけだ。

だけど、その中で魔法はイメージってのがあった。


これはもしかして……


早速、深夜トレーニングで訪れる、離れの洞窟の先で試してみる。

イメージはマッチの火……それで火の顕現魔法を唱えた場合……ぽわっ……

焚き火のイメージで唱えた場合……ぼぼわわっ……

うん、やはりそうか。

じゃあ後は文言の検証なんだけど、マッチの火のイメージで……


『地獄の業火よ、我にその力の一端を顕現せしめよ』……ぽわっ……

『業火、顕現』……ぽわっ……

『火よ、灯れ』……ぽわっ……

『………』……ぽわっ……


最後のは無詠唱な。


つまりさ、イメージがあれば詠唱は要らないみたいだ。

無詠唱はイメージした後で、ちょっと気合を込めてみたんだ。

どうにも魔法の真髄を開発したみたいだけど、誰にも言えない予感。

恐らく、最初の開発者ってイメージが貧困だったんだろう。

だから色々な言葉でイメージを無理やり想起させて、発動させたんじゃないかと思っている。


大量破壊兵器の映像とか、知ってるオレなら有利だよな。

地中海戦争の時の多国籍軍のあの、燃料爆弾の映像とかさ。

あのイメージのままにやれば、あの通りの効果が出そうな気がする。


後は属性も関係無いみたいだ。


火属性とか水属性とか、種類は色々あるらしい。

しかも、使える属性は多くても3種類で、普通は1種類とかあり得ないよな。

つまりそれだけ、この世界の存在のイメージが貧困って事になる。


だってオレ、全種使えるんだし。


それはともかく、夜の秘密特訓のせいか、魔法のイメージもかなり掴み、オリジナル魔法のレパートリーも増えていった。

魔法はイメージ……それは確実に魔法の真理と思えた。

昼間は寝ながら学び、夜は離れで魔法と身体トレーニング。

それを可能にしたのが【転移テレポート】魔法の確立。

周囲が分かるのを【探査ソナー】魔法と認識し、それを最大限に活用して調べたんだ。

そうしたらちょうど良い場所を見つけて、後はそこに行く方策として転移を覚えたと。


その場所でイメージのままに様々な魔法を開発し、実践していった。

身体能力もあり得ないぐらいに高くなっていたけど、比較対象が無いから分からない。

この世界の人間の強さを知らないから、もしかするとこれでも大人には敵わないんじゃないかって……

だからひたすらひたすら鍛えたんだ、将来の為に。


そうして夜の秘密トレーニングと、昼夜の寝た振り学習の日々も200日を過ぎた頃、遂に終わりになる時が来た。

何故か知らないけど、周囲の奴らの感情が分かるようになったんだ。

なのでこれもイメージと思い、魔法として分類して確立させた。


感知テレパス】魔法……


それによると、妙に悲しげなのである。

これは、もしかして、ヤバいんじゃ? 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ