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落ちこぼれ魔皇子  作者: 黒田明人
回想編
3/17

回想 2

本日3回目です。

 

「おいっ」


呼ばれてハッと気付く。

振り向こうとして、周囲の状況に気付く。

これは、かつての……

例え死ぬ前の夢でも、振り返りたくはなかった。

そうしてそのまま隣の女性が追い抜いていく。

婦警さんが追い抜いていく。

ああ、そもそもこれが始まりだったんだよな。


周囲に気を付けながら振り返ると、そこには誰も居ない。

あの時、オレは誰に呼ばれたんだろう。

それにしても、これが走馬灯なのか? 

まるで昔に戻ったみたいな……頬をつねる……イデデデ……嘘。


オレは昔に戻っていた。


かつてと同じ事を繰り返す周囲に対し、記憶のままに危機を避けていく。

ふと気付いたんだけど、身体能力が死んだ時のままになっている。

つまり、死刑が執行された当初の身体能力のまま戻ったようなのだ。


ならこれからもっと鍛えれば……


小学生ではあり得ない程の力と学識になりはしたが、それを表に見せる事はなかった。

そして苛めに対しても最初が肝心と、殴るこぶしを受け止めて、少年院で培った殺気で応酬。

青くなったそいつはそれからオレに手を出す事もなくなり、身体トレーニングと学識の取得の日々は続いた。

テストの点も中間になるように、目立った活動はしないように、あくまでも地味に地味に……


そうして何とか中学になる。


それからもかつての危機を避けて避けて避けて……

地味に目立たず成績は中位に留めた。

中学で苛めをしようとした奴に対し、軽い殺気で留まったのは幸いだろう。

かつて少年院の猛者連中から受けた殺気……あの経験が役に立つとは皮肉なものだ。

クラスでは地味で目立たない生徒の立ち位置を保持し、トレーニングと図書館通いは継続した。

前回でもやっていたせいか、語学に対する学識も深くなっていて、全教科で中位をキープした。


無難な学生生活は終わり、卒業の後でも呼び出しを食らう事はなかった。

そして未知なる体験をする事になる。


高校生活である。


平均的な成績のせいで公立高校に留まったが、そこでも同じように目立たないように過ごした。

テストは全て解けたが、解答は半分だけ記入し、後は誤答を記入した。

それでやれると思っていたんだけど、ある時、職員室に呼ばれたんだ。


「お前、これはどういう事だ」


見ればオレの答案が机の上に置かれていて、全て50点になっていた。


ああ、失敗したな……まさに油断であった。


今まで、記憶のままに危機を脱し、未知なる体験に突入し、このままいけると思ったんだ。

オレは偶然を主張したけど、教師はそれを信じなかった。

わざと手抜きをしたと言われ、不真面目な態度と言われ、反省文を書けと言われても……

テストの点が赤点ならまだ分かるのに、全部が同じ点ってだけで不真面目ってさ……


やはりまたしても世界が攻撃している気がした。


次に同じ事をやったら容赦しないと言われ、しかも次は全ての教科で80点以上を取れってさ。

なんでオレだけなんだ。

どうして他の奴らは良いんだよ。

赤点の奴らも居たってのに、なんで50点のオレだけが言われるんだ。

それでも期末は何とかバラけさせ、82点から88点の間で解答した。

なのに、また言われるんだ。


「お前な、本気でやれと言ったろ」


不公平もここに極まれり。

学年でも2桁の上位のオレに対し、赤点連中と一緒に補習ってどういう意味だよ。

小テストで満点にしてやったってのに、やっぱり手抜きかって言われる始末。

結局、夏休みも補習だと言われ、赤点連中と共に補習の日々だった。

理解している内容を何度も繰り返し学ばされ、オレは苦痛で堪らなかった。

そして補習最後のテスト、他の奴らは平均30点以上、なのにオレだけ90点って酷いだろ。

仕方が無いから全て本気で解き、100点満点でクリアした。


夏休みの後半は日々のトレーニングと図書館通いで終わらせた。

遊びなど全くする気にならず、ひたすら自分を磨く事に費やしたんだ。

新学期になって、中間テストでは思いっきり点をばらけさせたんだ。

他の奴らみたいにさ、なのに……


「また手抜きかよ、この野郎」


停学ってどういう……くそぅ……

やっぱり世界はオレが嫌いなんだな。

だからオレだけ苛められるんだろう。

ならもういいや、オレは自分をひたすら磨こう。

クラスで孤立しても、教師に嫌われても、オレはひたすらトレーニングと学識取得の日々となる。

どのみち赤点じゃなければ問題無いと、毎回のテストは40点から60点で散らした。

毎回、停学になりはしたものの、もうそんな事はどうでも良かった。

でもさ、教師は最後にこう言ったんだ。


「お前なんか受け入れてくれる大学があると思うなよ」


内申は滅茶苦茶にしたらしい。

すっかり極悪生徒に仕立て上げられており、入試の点は良いのに面接で落とされた。

受けた大学全てがそれで、就職も全滅になるらしかった。


「ふん、ざまあみろ」


それから先はもう仕方が無いよね。

折角の2回目の人生だったけどさ、もうそんなのどうでも良かったんだ。

教師の胸倉掴んでさ、そのまま投げ飛ばしてやったんだ。

そうしたらさ、遠くから笑い声が聞こえてさ、その時に思ったんだ。

ああ、やっぱり世界に嫌われていると。


教師? 死んだよ。


2階の窓ガラスを破って外に飛び出して、そのまま頭から墜落して即死したよ。

オレは窓とは違う方向に投げたのに、途中で方向が変わってさ。

まるで変化球を見ているみたいに曲がってさ、窓の外に飛んでいったんだ。

後は流れるように死刑宣告を受けたんだけど、もう好きにしたらって感じだったよ。

世界はオレが嫌いなんだろうから、とっとと終わりにしてくれって思ってたよ。


そうしてオレの刑は執行された。



少し眠いかも。

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