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落ちこぼれ魔皇子  作者: 黒田明人
回想編
2/17

回想 1

本日2回目投稿です。

 

某県某市……某刑務所


1人の男が狭い牢内に座っていた。

彼が座っているのは粗末なベッド。

彼はそこにずっと腰掛けて、何も無い壁をぼんやりと見ていた。


「どうしてこんな事になったんだろう?」


思えば小さな頃からついてなかった。

当時、小学2年だったっけ……あの時は、確か……


後ろから呼ばれて振り向く時に、手が隣の人に当たったんだ。

それがたまたま女性で、たまたま下腹部だったが為に、痴漢呼ばわりされたんだ。

それがたまたま婦警で、たまたま痴漢撲滅週間だったが為に、そのまま補導されたんだ。

偶然って散々言ったのになぁ……誰も信じてくれずに結局……


13才未満で何とかなったけど、その事がクラス中に広まって村八分になったっけ。

誰に呼ばれたのかは、結局分からないままだったな。

それから色々と苛められたけど、黙々と身体を鍛えて図書館で勉強の日々だったな。

学校という名の牢獄から帰れば、家では針のむしろ。

だからオレの行き先は図書館しかなかったんだ。

早朝のランニングと筋力トレーニングの日々で、何とか苛めの暴力に耐えられる身体になったっけ。

蹴られても殴られても耐えられる身体になったけど、もっともっと鍛えようと思ったっけ。


小6になった頃、やっぱり苛めの日々だったんだけど、あんまり激しいから思わず反撃しちゃったんだ。

そうしたらそいつは先生に訴えて、オレは苛めっ子のレッテルを貼られたんだ。

酷いよな、ずっと……小2から小6まで苛められていたのに、1回の反撃で逆転するんだもんな。

すっかりそいつをずっと苛めていたって事にされて、家族とはますます疎遠になったんだっけ。

洗濯も自分でやらなきゃならなくなり、ご飯もまともに食えなくなり、残飯がオレの食事になったんだ。

捨ててある野菜くずなんかを洗って刻んでさ、焼いたり煮たりして何とか生きていたよ。

冷蔵庫の冷や飯だけは勝手に食べても何も言わなかったのが幸いだったけど、あれで料理もやれるようになったっけ。

もちろん、朝、起こしてもくれないから、早朝トレーニングが終わったらそのまま登校したよ。


中学に入って何とかなると思ったんだけど、また苛めが再開されたんだよな。

今度は他の小学校だった奴らも合わせて、日々苛められ続けたっけ。

身体はあざだらけになって、それでもトレーニングは続けたんだっけな。

身体が鈍ると苛めに耐えられなくなりそうで……

腹筋を鍛えた恩恵で、腹を殴られても蹴られても何とか耐えられるようになったな。

だけど、他はそうじゃなかった。

だからあざは身体中にあって、消えるはなから足されていたっけ。

自然、防御の型を学ぶ事になって、図書館ではそればかりを調べていたっけ。

だけど、中3の卒業式の後、校舎裏に連れていかれて……


あれは殺されると思ったんだ。

だから反撃したのに……


結局、乱闘扱いになって、高校は入学前に取り消しになった。

ただ振りほどいただけなのに、そいつがよろけて倒れて頭を打って、そのまま死んだんだ。

ただ殴る攻撃を避けただけなのに、そいつは空振りした勢いで壁にぶつかり、たまたま出ていた釘で失明したんだ。

蹴られたから足を跳ね除けたら、そいつはそのまま後ろに倒れ、頭を強く打って意識不明の後に死んだんだ。

最後の1人なんて、逃げようとしてつまづいて、自分で転んで頭を打って死んだんだ。


オレ、殺人犯にされたんだ。


どんなに正当防衛を主張しても、過剰防衛で有罪になったんだ。

3年間、毎日苛められて、最後の最後で反撃しただけなのに……

それも振りほどくとか、避けるとか、跳ね除けるとか、攻撃してないのに。


少年院送致にされて、房内でもやっぱり苛められたんだ。

そりゃそうだよな、オレは暴力を振るった事なんて一度も無かったんだし。

それにひたすら耐えていて、そしてまた避けたんだ。

そうしたらそいつ、頭を打って死んだんだ。


ただ、避けただけって言ったのに、罪が加算されたんだ。


それからも避けたり跳ね除けたりするたびに、周囲の奴らは死んでいくんだ。

すっかり死神って仇名になったんだよな。

そしてオレの罪も重くなったんだ。

釈明するのに誰も信じてくれないんだ。


避けた、かわした、跳ね除けた……なのに有罪。


きっとこの世界は、オレに死ねって言ってるんだろう。

だから全員で寄ってたかってオレを苛めて、避けたら有罪って言うんだろう。

ならもう良いよ、このまま執行すればさ。


そうしてオレは死刑になった。



日曜日なのでやれるだけやってみます。

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