アルタイルとベガ
アルタイルとベガ
ヒューーーーーー⋯⋯
という細長い線が流れ、また1つ流れ星がおちてゆく。
私は流れ星を見るのは生まれてから3度目になるのだった。
ヒューーーー‐‐・・・・
ヒューーーーー‐・・・・
今度は続けて2つおちてゆく。
私の目には、3つの流れ星が焼きついていたが私をもっと愉快にしたのは3つの星がみな天の川を横切るようにしておちたことだったのだ。
私の故郷には、このような伝説が残っていた。私の生まれる前、私の母と父は私が逆児であるのを苦にして自殺しようとした。当時逆児は麻酔もきかず、痛い思いをして生まなければならなかったからであった。私は当時を偲ばせるものとして、私のへその緒が残っていたのを思い出すのだった。私のへその緒は、ねじれ具合が他の人とちがって甚だひどいのであった。今でも、そのへその緒を見ると、私の母と父へ愛が環えってくるのを間の当たりに感じることができるのだった。
私の家では、そのへその緒を大切に蔵にしまっていたのだったが、私が見せて欲しいと頼むと、いちいち出してきては見せてくれたのだった。私は当時のことを思ってまた涙の出そうになるのを必死でくいとめると、話の続きを思った。
「ねえあなた、この子の行末は、一体どうなるのでしょう。逆児は決まって世にあだをなすと言うじゃありませんか。私はこの子のことを思うと、気が変になりそうです。」
「お前はそんなことを心配しなくとも良いのだよ。私はいつでもお前のそばにいるから、お前もそのようなつもりで、この子を産んだら良いのだよ。なんでも思ったことが本当になるわけではないのだからね。今の時代はいちいち逆児ぐらいで子供を忌み嫌ったりはしないよ。だから安心して私達の子供を産んでくれるよう祈ってるよ。」
私はこのようなやりとりが2人の間でなされたと聞いていたのだった。
私の祖父と祖母は私のことを非常に心配して近所の氏神へお百度参りまでして私の安産を神に祈願してくれたのだった。私はいつもお百度参りを踏んでくれた祖父母に感謝しながら、父と母のその後を思った。
「お前の体の具合が良くないので私は気が気ではないよ。私はいつもお前のこと思って何度も氏神様へお願いしたが一向に良くならない。私はもう神社へゆくのはやめてずっとお前のそばにいるよ。お前がよくなるまで私はいつまでもこうしてお前のそばにいるつもりだよ。私は今までなるべくお前からあまり遠くへゆかないようにしてきたが、どうもちがうようだ。私は間違っていた。もうお前を一度だって手放すまい。私はこの児のことを思ってこそこのように言っているのだよ。私はもしお前が亡くなるようなことがあれば、一緒に死のうとおもっているよ。だってお前は私にとって一番大切な人だから。この児には大変申し訳なく
思うけれど、この子のことは私の田舎の両親に任せて私はお前と共に逝く
つもりだよ。私はお前が妻であってくれてほんとうによかったと思っている。何故なら私のことを一番想ってくれているのがお前だからだ。私の生きる理由もまた、お前なしでは考えられないのだから。私はこう思っているのだよ。」
私の父の話をどううけとめたのか、母はそれ切りなにも言わなくなったのだった。私の母のなくなったのはそれから100日が経過してからであった。
氏神様が命を伸ばしてくれたのだと近所の者は口々にそうもてはやしたのだった。私の父が逝ったのはそれから3日後のことだった。睡眠薬を服用してのことだった。私の祖父母はその後私を七夕様の子として大切に育ててくれたのだった。私の命が二十八年間ながらえてきたのはみなこの祖父母のおかげであったと今でも感謝して止まない。私の父と母はこうして還らぬ人となり私のことを今でも夜の空から見守っていてくれているのだった。




