タンデム
別人視点が入ります
Side 六花
む! また主さまが無理をしている気配がするのです。きっと今の侵入者の方は強敵なのですね。
今すぐ駆けつけたいのですが、あいにく火山だとわたしでは立ち入ることすらできないのです。
「久遠ちゃん、刹那ちゃん、ちょっと来てください」
口惜しいのですが、久遠ちゃんたちを向かわせることしかわたしに出来ることがありません。
「何かしら、お姉様?」
「ニャア?」
「先ほど侵入者が現れたことは知っていますね」
「ええ、もちろんよ。火山だから心配ないでしょ?」
「ところがそうでもないのです」
「ニャ~?」
「どうも主さまが無理をしている気配がするのです。二人には申し訳ないのですが、わたしは行けないので至急、主さまの救援に向かって欲しいのです」
「(お兄様が無理をしている気配って…………お姉様、最近疲れているのかしら?)」ヒソヒソ
「(ニャア、ニャニャン、ニャ~)」ヒソヒソ
む、失礼な。主さまはわりとすぐに無理をする方なので、いつ無理をするかなんて簡単にわかるものです。
「今は信じられなくても構わないので、とりあえず向かってください。どちらにしても様子を見た方がよいので」
「まぁ、お姉様がそこまで言うならいいけれど……」
「ニャア」
久遠ちゃんたちは微妙に納得いっていない様子ですが、向かってくれて良かったのです。
さて、わたしはお説教の準備をしますかね。
Side 蒼魔
おぅ!? なんか今背筋がゾッとしたぞ。
……ってそんな場合じゃないな、早いとこ水奈に追い付かないと。
「キィーッ」
少し遅くなった脚を再び早めようとしたその時、甲高い声で呼び止められる。
「小鬼……と、朧車か」
振り向くとそこには朧車に跨がった一鬼の小鬼がいた。
小鬼の跨がる朧車は車妖怪たちにリクエストされて作成した妖怪の一鬼なわけだが、なぜか牛車ではなく正面に鬼面や骸骨の上半身のついたバイクの妖怪。
自走できない訳ではないが、誰かが乗っていた方がいいらしく、小鬼とコンビを組ませている。
「キキィ?」
「ああ、侵入者の所に向かっているところだ」
「……ヴォン」
「乗って行け……ってか?」
「キィー」
「ヴォン」
ふむ、乗って行った方が早く着くか……。
「わかった、よろしくたのむ」
二鬼の言葉に甘え、小鬼と二人乗りする形で朧車に乗り込む。
「キィー」
「え、メットは被れって…………あ、ああ、わかった」
意外とこの辺はきちんとしてるんだな……。
六花が妙な能力に目覚めていますが、スキルや称号効果ではありません