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「暑いな……外よりは多少ましだが……冷房設備でも作るか?」


 火山に設置してある鍛冶場だけにものすごく暑い。


「いいよ、今の段階で暑くなくても鍛冶仕事を始めればどうせ暑くなるしね。

 それにあたいは腐っても鍛冶神の末裔なんだから暑さにはつよいしね」


「それもそうか。

ところで何か追加で必要な物はあるか?」


 鍛冶場の中を見回すと炉や金床に熱した金属を鋏むペンチみたいなものなど、鍛冶に最低限必要そうな物は揃ってそうだが素人目だけにあてにならないだろう。


「う~ん、そうだねぇ……。

 設備自体は問題ない……というか、後々自分でなんとかできる程度には揃っているけど、消耗品の類いが全くないね」


 あらら、設備には不満あり……でも自力でなんとかするのか。


「消耗品……というと素材か?」


「それもあるけど、砥石や研ぎ粉とかだね。

それに何よりも炭がないと話にならないよ」


「炭か……その辺の熔岩を炉に突っ込んで、ってわけにもいかないのか?」


「当たり前だよ。

 鍛冶っていうのは緻密な温度調整が肝だからね。

 それに、炭は鋼にも使うし、何より精合錬金の要だし」


「精合錬金?」


 聞き慣れない……というか、聞いたことのない言葉だな。

 鋼が鉄と炭素の合金ということ──正確には違うらしいが──は知っているが……。


「基本的には合金と変わらないんだけどね、普通の合金と違って魔力やモンスターの一部なんかを混ぜ込んで金属を強化するんだよ」


「なるほど。

 やっぱり普通の金属よりもモンスター素材や精合錬金の方が強いのか?」


「精合錬金≧モンスター素材>金属って感じかな?

 金属にはオリハルコンやヒヒイロカネみたいなものすごく強いのもあるし、精合錬金も金属と素材の相性や職人の腕におもいっきり左右されちゃうから一概にそうとはいえないんだけどね」


「その言い方だとモンスター素材をそのまま使うのが良さそうな感じだな……」


「まぁ、それが一番簡単ではあるよね。適当に武器や防具を形作ればそれなりの物になるし。

 でもね、それだとやっぱり『それなり』の物にしかならないんだよ。

 モンスター素材の力を100%発揮できないし、身体への負担や悪影響もあるから正直素材の無駄(・・)遣い……というより駄目(・・)遣いだよ、それ」


 ……ってことはあのボーンメイルも素材そのままって感じだったから、駄目遣いな品なのか。あとで見せてみるかな。


「で、話をもどすけど、精合錬金は金属と魔力やモンスター素材をただ混ぜ合わせればいいわけじゃないの。融かし込んで混ぜ合わせてもなかなか融和しないだよね。

 そこで炭の登場。

 炭が金属と魔力や素材を取り持つ接着剤の役割をするんだよ」


「炭にもやっぱりこだわりとかは……」

「もちろんあるよ。

 普通の木の炭やコークスだと金属や素材との相性もあるけど、精合錬金しないよりはましかな? っていうような品ばかり。

 正直、精錬合金にする意味がないよ。精合錬金の練習って感じかな」


 結構シビアなのな。


「まぁ、ただの木の炭でも職人技の炭なら話はべつだけどね。

 きちんとした品にしたいなら木系のモンスターか、霊木や魔木クラスの木の炭じゃないと駄目だね」


「……やけにポイントが高くて、こんなの誰が使うんだよ、って思ってた炭がそんな感じの名前だったな」


「精合錬金用だろうね。

 霊木や魔木のさらに上の、霊樹と魔樹の可能性もあるかな?」


「まだ上があったか……」


 生産もなかなか奥が深い。


「残念ながら更に上に世界樹や神木・神樹なんてものもあるよ」


「そんな炭にすると罰当たりな気がするような物まであるのかよ……」


それは果たして炭にしても良いものなのか果てしなく疑問だ。


「あと木炭じゃなくて石炭や生物炭も色々だね」


「もう木炭だけでも頭がいっぱい……生物炭?」

 何それ?

 石炭ってのはこの場合、化石燃料の石炭じゃなくて、鉱物由来の炭だろうけど……化石燃料の石炭はもとをただせば植物だし。


「木炭の木を木じゃなくて生き物に置き換えて作る炭のこと。

 これは火熾しに使えるものじゃないからご主人は知らなかったかな?」


「…………とりあえず、炭にも色々あることだけはわかった」


 そろそろ頭がパンクしそうだ。


「ありゃ、聞きたくないかぁ……残念。

 まぁいいや、とりあえずご主人、ここの隣に炭焼き小屋もお願いできるかな?」


「ああ、わかった。けど、今はもうポイントに余裕がないから悪いけど今度な」


「うん、あたいも鍛冶のスキルを磨かないといけないからね。しばらくは普通の炭さえ貰えれば大丈夫だよ」


「ああ」


 炭と鍛冶に必要な消耗品を作って一本踏鞴に渡す。


「ほれ」


「うん、ありがと。これであたいのところは大丈夫かな」


「それじゃ、次に行くか」


 次は湖畔の工房だな。

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