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禅と鶫

「ミャッ」

 

「がっ!? くそがぁあっ!」

 

「ミャーッ! ミッ、ミャッ……」

 

「「「ミャアー!」」」

 

「「「ぐぁっ!」」」

 

 雷平原に到着すると絶賛バトル中。数人の侵入者を雷山猫たちが相手にしているようだ。

 

 ゼンが敵のリーダーとおぼしき奴を1鬼で抑えながら、他の雷山猫たちの指揮を執りながら闘っている。

 

 ゼンの指示は一斉放電。タイミングを合わせて放電することで威力を増加し、侵入者の一網打尽を狙っているようだ……が、

 

「ちっ、よくもやりやがったな」

「そんな電撃で殺られるか!」

 

「痛ぇ、痛ぇーよ」

 

 

 一斉放電のタイミングがズレたのか、そもそも威力不足なのかはわからないが、いまいち効いた様子がない。

 ……一人やけに痛がる空気の読めてない奴がいるような気がするが、気のせい……あれは幻だ。

 

「「「ミャッ!?」」」

 

 雷山猫たちは自分たちの電撃が効いてないことに驚いている。

 この様子では放電のタイミングがズレたわけではなさそうだし、威力不足の線も薄そうだ……ん?

 

 よく見ると侵入者達の装備は全体的に今までの侵入者の鎧と違い一切金属パーツがない安っぽい──レザーアーマーなどの革装備だ。

 だが革装備=耐電性が高い……効きが悪い理由はこれか?

 幻は一人だけ金属鎧だし……。

 正直、この幻はアホなのだろうか? と思う。

 うちのダンジョンは全5層のうち火山と雪原、そして雷ヶ原の3層は金属装備では致命的に相性が悪いのに。まぁ逆に革装備だと湿地帯との相性が悪いんだけどな。

 だが、ここ最近の第一層ずっと雷ヶ原だし、金属装備では相性が悪い確率は3/5なんだから、普通は革装備を選ぶだろ……。もしくは、ゼンが相手しているリーダーっぽい奴みたいに骨装備にするとかさ。

 俺が思うのも難だが、うちのダンジョンの情報もそれなりに出回っているんだからちゃんと調べて準備整えてからこいよな。



 ……そういや、骨装備って初めて見たな。

 今まで侵入者は1層が森固定だった時は金属が多い装備だったが、今はだいたいが革装備かやたらと頑丈な布装備。

 骨装備なんて原始人とか蛮族っぽいから普通やらないよな……ゼンが相手しているアイツまるで山賊…………ん?


 ……もしかしてこいつら冒険者じゃなくて盗賊か? しまったな…ちゃんと侵入者が来たときのメッセージ聞いてればよかった……。

 でも、幻の場違いな装備を考えるとたぶん盗賊だな。

 冒険者はギルドで情報が手に入るから、最近では金属装備を避ける傾向にあったし、よく見ると、コイツらの装備は全体的にみすぼらしい。 つーか、骨装備ってなんだよ……でも、盗賊とはいえリーダー格が装備しているってことは骨装備って実は強いのか?

 攻撃力と電撃能力が他の雷山猫より強いゼンの電撃猫パンチもろくに効いてないし。……後で強奪、もとい、回収して確かめてみるか。

 

「ミャッ」

 

「……ミャゥ……」

「ミ……ア……」

 

 そうこう考えていると、雷山猫たちがどんどん劣勢になる。既に何鬼かは殺られてしまっている。

 

「しゃ、しゃーっ?」

 

 加勢しなきゃ、って……援護した方がいいのはわかるが、そんなワクワクしたような声で言うなよ。

 雷山猫たちで勝てないんだから、お前に勝てるわけないんだし。

 それに……。

 

「ヒョ─────ッ!」ドガンッ

 

「「「グァァァァアアア!」」」」

 

 そういうのはボスであるツグミに任せればいいんだから。

 

 ツグミは現れるなり、上空から電撃……いや雷撃を放ち、侵入者たちを攻撃する。

 

 さすがに雷山猫たちの電撃より遥かに強いツグミの雷撃は革装備では弾けないらしく侵入者たちは倒れ臥す。

 ……幻にも直撃してたけど……本物なら死んでんじゃね?

 

「ぐっ、キメラだと!?

 なんでこんな所にそんな大物が……」

 

 者は全員倒れたかと思っていたが、リーダーの男だけは手に持った斧を支えに、立ち上がる。

 ……骨装備って本気で強いんだな……。

 

「ミャミャッ!?」

 

「ヒ、ヒョヒョ、ヒョ──ッ!」

 

 今のを訳すと、

 

『な、なんで貴女がここに!?』

 

『べ、別にあんたのために来てあげたんじゃないんだから、勘違いしないでよね!』

 

 ってところか……戦闘中にいちゃついてんじゃねぇよ。

 

「ヒョ、ヒョヒョ!」ポイッ

『これでも食べて、さっさと勝負を決めなさい!』かな?

 

 ツグミは雷属性のモンスターの力を一時的に高める効果のある『呼雷樹の実』をゼンに投げ渡しながらそう言うと、その場を離れる……ふりをして近くに潜伏する。

 

 

「み~て~た~ぞ~」

 

「しゃー♪」

 

「しゅ、しゅ―……」

 

 なぜ潜伏したのがわかるかと言うと、ツグミの選んだ潜伏先が俺たちのいる所だからだ。

 

「ヒョ!?」

 

 

 まぁ、今の流れを見ていた人はわかると思うが、ツグミはゼンに惚れているツンデレだったりする。

 いつも侵入者が来るとゼンの近くまで来て、ゼンがピンチになると助けるということを繰り返しているそうだ。(雷山猫談)

 もうお前ら番になっちまえよ、とゼンを除く雷山猫全員が思っているらしいが、ツンデレなツグミと、妖怪としての格が合わないと思っているゼンではくっつく気配は全くないようだ。

 ツグミはゼンの思いを知っているようで、早くレベルアップさせて進化するよう助けるのは極力我慢し、止めの一撃もゼンに譲っているらしい……そこまでするなら素直に告白しろよ……。

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