六花の改装案
さて、次は森な訳だがどうしようかな……正直、もともとがダンジョンのカモフラージュ──ダンジョン内じゃないと錯覚させるためのフィールドなので、森の固定戦力はボスの蜘蛛夫婦とその配下で斥候役の小蜘蛛だけ。あとは野生動物まかせだから特に何かを追加する必要がない。
もしくは、ちゃんとしたダンジョンにするために逆に手を加えまくる必要がある。
「どうかしたのですか主さま?」
「ん、ああ、次は森に行くつもりなんだが、どうしたもんかな、とな。他の階層にはいろいろとしてるけど、あそこの戦力は蜘蛛夫婦と小蜘蛛たちだけだからなぁ……」
「なるほどなのです。
あそこは少し特殊な場所なので、手を加えるべきかどうか……手を加えるなら徹底的に加えるべきか迷っているのですね」
「まぁそうだ、よくわかったな」ナデナデ
考えてることドンピシャだったぞ。
「えへへ、これでも主さまの側近ですから」
……そういや、そうだったな、その設定忘れてたわ。
「お悩みなら森の階層を増やしてはどうでしょう?
今ある森はそのままに、次の階層も森にしてそちらをきちんとしたダンジョン仕様に……」
「ふむ、なかなか面白そうだな……」
階層はそのうち増やすつもりだったが、別に階層でダブりがあっちゃダメだなんてルールはないもんな……と言うか何で俺はわざわざ全階層でフィールドをバラバラにしたんだ?
とりあえず、ある程度ポイントが貯まったら1フィールド3~5階層くらいで大改装でもしようかな。
火山なんかは現状だと単なる山道──噴火が起こったり、マグマが流れてくるけど──だけど、階層ぶち抜きとかすれば火山内部なんかもできそうだな……。
ついでに雪原も雪山にしてみるか。
…………って、それだと森の待遇改善にはならんよな。メインが火山と雪原になってるし。
ふぅ、結局蜘蛛夫婦に要望を直接尋ねるか。六花の案も悪くはないのだが一つ問題がある。
「面白くはあるが、規模が大きすぎるな」
「ぁぅ……」
あらら、六花ちゃん、ちょっと凹み気味?
まぁ、いい意見だと思ったのがダメ出し食らったら凹むか。……でもな、
「だが、有用な意見だから次の大改装のときに存分に使わせてもらうぞ」
人の話は最後まで聞こうな。
「……ぁ、はい、ありがとうございます!」
六花も調子を取り戻したので、一緒に蜘蛛夫婦のところに向か……あれ?
「六花も来るのか?」
「だめ、ですか?」
「いや、だめじゃないが、術の訓練に来たんじゃないのか?」
「もう今日の訓練は終えたのです」
ふ~ん、まだ余裕そうだが……まぁ、いつ侵入者が来るかわからんから余力は残しておくか。
「そうか、それなら一緒にいくか?」
「はいっ!」
ってなわけで、森……と見せかけて、マスタールームの隣の孵化部屋に到着。
現在森は5層に設置してあるので、ボスである蜘蛛夫婦が詰めている必要がない。また子育てに専念させるために卵の置いてあるこの孵化部屋に居させているのだ。
ちなみにコクホウ・ナデシコもここにいるので湿地帯の要望もついでに聞ける。
「シュー?」
「シュシュー?」
「シャー?」
「ああ、もう大丈夫だ。快復の報せも兼ねて見廻りをしてきたところだ」
まずは定番のもう大丈夫か?大丈夫だ、のやりとりをする。
「ん? コクホウはいないのか?」
「シャシャァー」
「2層に行っているのか……入れ違いになったか……」
ナデシコの説明によるとコクホウは2層の河童たちのところへ行っているらしい。定期的に顔を出しとかないと、オス河童と子河童が際限なく遊ぶんだとか……。
「う~ん、ちょっとタイミングが悪かったな……」
「シュー?」
「各階層に顔を出すついでに何か要望がないか聞いて回っているんだがな、コクホウがいないと湿地帯の意見を聞きにくいな、と」
知性が子供な河童たちの要望は聞くだけ無駄に近いから、河童でありながらも知性がまともなコクホウに聞くのが一番なんだが、そうでなくとも階層ボスの意見を無視するわけにはいかないし……そういや雷平原のツグミの意見は聞いてなかった気もするが、細かいことは気にしない。
……それなら、サブボスなナデシコの意見でもいいかな?