劣勢と援軍、そして……
狂骨との戦闘を開始してどれくらい時間が経ったのだろうか?こっちの勢力の名無しは全員一回は殺られていて、名付きも水奈たちの回復がなかったら殺られていただろう。
囲まれて動きを封じられているのに数の差をものともせず狂骨は暴れまくる。
こいつ生前より強くなってないか?落とし穴で嵌め殺したけどここまで動きは良くなかった覚えがある。
「…………」カタカタカタ、ブンッ
「危ない、六花、水奈!」
後方でせっせと氷の武具を作っていた六花と回復の要の水奈を狙い、間にいた妖怪たちを蹴散らしながら狂骨が一直線にやって来る。
キンッ
「くっ……」
「主さまっ!?」
「……パァパ……」
そうはさせまいと、俺は二人の前に出て宝剣の一撃を妖刀で受け止める。
……くそ、かなり重いな。
「ダメなのです主さま、わたしを置いて水奈ちゃんとお下がりください」
「……六花ねぇ……」
「お前を置いて下がれる訳がないだろうが……ぐっ」
「主さま……」
くそ、骨のくせになんて力だよ。このままだと押し切られる。
「っそ……」
「主さまっ!」
しばらく鍔競り合いを続けるも、ついに押し切られることを覚悟……
「クケ」
「シュー」
したそのとき、一つの黒い何かと、数本の白くて細い何かが俺の背後から脇を抜けて狂骨にぶつかる。
黒い方は狂骨を吹っ飛ばし、白い方は狂骨を縛り付け動きを封じる。
「クケケ」
「コクホウ、お前どうしてここに……それに糸ってことは……」
黒い方の正体はコクホウ、そして白くて細い何かの正体は糸……ってことは当然……、
「アスラお前も……嫁さん達についてないとダメだろうが」
土蜘蛛のアスラだ。
伴侶の産後ゆえに呼ばなかった二鬼の妖怪がこの場に現れた。
「クケケ、クケ、ククケ。クケ、ククク、ケク、クケ。
〈旦那のピンチに駆けつけない訳にもいかないでしょ。それにみすみす主や仲間を死なせたとあっちゃあ、生まれてきた子供に顔向けできやせんぜ〉」
俺の言葉にコクホウが返事を返す。
……なんで、コクホウの言っている事がはっきりわかるんだ?
──『妖怪系モンスター100体以上作成』『妖怪系モンスターからの信頼』『前線で戦う迷宮主』の条件を満たしました。
「シュー、シュシュ。シュー。
〈我らが妻も自分たちよりも主殿と同胞の事を優先すべきとの事。伴侶からの許しがあるなら、我らに躊躇う理由なし)」
コクホウよりも付き合いが短いアスラの言葉さえもはっきりと理解できる。
──《百鬼を統べる者》の称号を獲得しました。専用スキル《魔人化:ぬらりひょん》を発動します。