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仙術もどき

すみません、また遅れました。

「それじゃあ、私の操作を切るから、自力で廻らせてみなさい」


「わかりました……っく」


 刹那が顔をしかめたので、久遠が気の操作をやめたのはすぐにわかった。どうやら相当難しいようだ。


「……やはり、この気を全身を廻らせるのは難しいですね。これだと、いざというときは無理やり押さえ付けた方がいいような気がします」


「それはあなたが未熟だからよ。慣れれば全身に廻らせた方が効率だけでなく、強化度合いがいいもの」


「そうなのですか?」


「そうよ……そうね、真似事だけど少し実践してあげるわ」


 そう言って久遠は刹那から離れた。


「久遠姉様?」


「さあ、かかっていらっしゃい。押さえ付けの仙術でも、今なら大丈夫でしょう」


 そしてある程度距離を取ると、振り返って刹那と対峙する。


「かかって、って……身体攻撃をメインとする近接タイプのわたくしと、身体攻撃と術の両方を使う遠近両立タイプの──それも術寄りの久遠姉様では、接近戦はわたくしの方が有利のハズです。ましてや未熟とはいえ仙術が加味されていては勝負にならないかと」


「それはどうかしらね。いいからかかっていらっしゃい」


「そこまで言うのでしたらわかりました、では……いきます」


 久遠の押しに負けて、刹那は渋々といった感じで戦闘態勢に入る。今は武器を持っていないで、手の爪を伸ばし……駆け出した。

 仙術で強化された刹那は非常に速く、一瞬で距離を詰めて、その間合いに久遠を捉えた。


「私はこっち、それは残像よ」


 が、刹那が爪を繰り出す前に久遠の姿が一瞬消えて、刹那の背後に現れた。


「……そんな、今のは……仙術?」


「……っふぅ、違うわ。身の内にある妖力をさっきの気を全身に廻らせる要領で、廻らせただけよ。さっき真似事と言ったでしょう。

 妖力を全身に廻らせた仙術もどきでも、あなたの押さえ付けの仙術を上回るくらいには差があるのよ」


「ですが、今のならば、わたくしの仙術は必要ないのでは?」


「そんなことないわ。今のは普通の身体強化なんかとは妖力の消費がけた違いだもの。今の数秒でほとんど空になったわ。

 仙術は自然の気を取り入れれば無尽蔵に使えるのが利点の一つよ。自然の力である気と私一鬼(ひとり)の妖力なんて比べ物になるわけないでしょう」


 久遠の仙術もどきは燃費が悪いらしい。

 確かに先ほどからずっと仙術を発動している刹那は疲れた様子がないのに、久遠は隠してはいるがかなり疲れている。


「比べ物にならないのは量だけでなく、質もよ。

 きちんと気を扱えれば、私の仙術もどきに負けるハズなんてないのよ。さっきあなたが言ったように体術もあなたの方が上なのだしね。

 わかったなら、早く自然に気を廻らせられるようになりなさい」


「はい」


 返事を聞くと、久遠は刹那に背を向けて立ち去った。

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