仙術の影響
「コロコロ、コロ」
「コロン」
「だいぶ形になってきたな」
目の前に広がった田園風景に思わず声が漏れた。最近は報告は聞いていたのだが、直接来ていなかったので、様々な野菜が実る畑に感心したのだ。
少し間が空いただけなのだが、作物ってこんなにすぐに実るようなものだったかな? ……ダンジョンの特性みたいなもんかね?
「前は子河童たちの遊び場になっていたから作業があまり捗らなかったそうよ。けど、今はあの子たちが迷宮区の方に出るようになったし、産女が面倒を見るようになったから大丈夫なんですって。
ちょくちょく見てたからわかるのだけど、相当子河童たちが邪魔だったそうよ」
……アイツらどれだけ迷惑かけてたんだよ。若干迷宮区の方に出したのが間違いな気がしてきた……けど、まぁ生産区に置いておくよりはマシかな。
「それよりも、刹那を探さなくていいの?」
「おっと、そういやそうだな」
さて、見渡す限り刹那の姿は見えないが……コロポックルに聞いてみるか。
「ちょっといいか?」
「コロ?」
「ここに刹那は来てないか?」
「コロロコロコロ、コロン」
手近なところにいた一鬼を捕まえて尋ねたところ、先ほどまではいたが、今は別の場所に移動したらしい。
「果樹園の方にいるのか……」
「入れ違いになったみたいね」
果樹園は畑のある平原ではなく、先ほどまでいた森にある。
久遠の言った通り、見事に入れ違いになったようだ。
「……そういえば、刹那の仙術は周囲の気を取り込むことだけど、作物に影響はないのか?」
自然の物ではないが、自然の象徴である植物なので多少なりとも影響がありそうなんだが。何となくだが、成長に悪かったり、味や栄養が抜けてそうなイメージがある。
「コロ」
コロポックルの返事はイエス。やはりあるみたいだ。
刹那には悪いが禁止した方がいいかな?
そう考えていたら、次のコロポックルの言葉に驚かされた。
「コロコロ、ココロロコロロン」
「え、刹那が近くで仙術の修行をしていると、作物の大きくなって品質もよくなる?」
仙術は悪影響ではなく好影響らしい。
「気を吸収してるのに何でだ?」
「普通は逆だと思うのだけど……あ!」
「何かわかったのか?」
「う、うん」
久遠も俺と同意見らしく首をかしげていたのだが、途中で何かに気づいたようだ。
「そのね、多分なのだけど、仙術に失敗してるからだと思うわ」
「失敗? それがどうして好影響に繋がるんだ?」
「気を吸引できても、身の内に収めるのに失敗してるのだと思うわ。
それで収まらなかった気が畑に溢れて、作物の成長に繋がったのよ」
気とは自然のエネルギーで、畑の周りには木々などの自然はそれなりにある。エネルギーの流れで見ると、自然エネルギーが畑に移動したわけだから、作物にいい影響があったということか。
これが意図的なものなら喜んでいいと思うんだがな……。