水奈と六花のお願い
「あ、主さま、倉庫の氷の敷き詰めは完了しました」
「そうかご苦労様」ナデナデ
服を着て部屋に戻るとすぐさま六花がトテトテと駆け寄って来て報告してくる。
よし、これで六花にもご褒美を与える理由ができたな、さっきの戦闘じゃあ先制攻撃を食らっただけで、六花だけ何もしてないから一人だけ仲間外れな感じだったから口実ができて助かった。
「よし、ちょっと待ってな」
台所に向かい、豆腐を薄切りに油で揚げて油揚げを作り、甘く煮る。
「久遠さっきの戦いはよくやったな、褒美だ」
「クゥン♪」フリフリ
お、喜んでるな。
「刹那にはこれだ」
マタタビ粉を刹那に振りかける。
「ニャ!?……ニャ~ン」スリスリ
すると普段はあまり甘えて来ない刹那が甘えた声を出しながらスリ寄ってきた。
さてお次は水奈……と行きたいが、まだ何をあげればいいか思い浮かばないので六花に。
六花は……正直、頭の三角笠がダサいんだよな。……まぁ、それでも十分かわいいんだけどな。ってなわけで、
「……付きフードケープを作成──承認。六花、笠の代わりにこれを被りなさい」
ノービス制限によるアイテムの作成制限も外れたので、あるものが付いた白いフードケープを作り六花に渡す。
あるもの……それは『ウサ耳』。久遠が狐で刹那が猫、と二匹とも獣耳があるのに六花だけないのは寂しい気がしたので付けてみました。
ちなみに針金などの芯が入って立っているタイプではなく、垂れているタイプで後ろに流す感じ。ただし、六花の感情をトレースしてピコピコ動いたり立ったりする仕掛けがある。
「わぁ、主さまありがとうございます」
受け取った六花はさっそく三角笠を外し、フードケープをつける。
「主さま、似合います?」
「ああ、似合ってる可愛いぞ」
「えへへ」
似合っていて可愛いが服がダサいのがちょい欠点、今は服まで作る余裕がないからしばらくは我慢だな。
「さて、水奈にも褒美をあげたいんだが……水奈は何がいい?」
……プルッ、ウネウネ
「え~と、今は良いそうです。ただ、あるスキルが欲しいので今後活躍し続けてポイントがたまったときにそれをちょうだい、と言っているのです」
水奈に質問をして六花経由で答えを聞く。
スキルか、このダンジョンの作成物って基本的に戦闘やダンジョン経営に直接関係ないもの──食料品など──は低ポイントでつくれるが、スキルに関しては話が別で戦闘に無関係なものや、どんな些細なスキルでもかなりのポイントを消費する。例えば《農業》スキルは1700ポイントと初期配布ポイントを上回っている。
「かまわないが……かなり時間がかかるし、相応の活躍をしてもらうぞ」
ウネウネ
今のは単純な返事なので訳されなくてもわかった。
それでもいい、か。
「それで何のスキルが欲しいんだ?」
プルル、ウネ
「え~と、今はないしょだそうです。水奈ちゃんも練習しなくちゃいけないことがあって、それができれば教えてくれるみたいなのです」
練習……ね、つまり水奈が今できることを補助するようなスキルかな?
「そうか、それなら頑張れよ」ナデナデ
プルル、ウネウネ、プルンッ
応援して撫でると水奈は嬉しそうに身体を震わせ一礼し部屋から立ち去った。そろそろ水奈の休憩時間も終わりのようだ。
さて、一通り論功行賞が終わったところで、
「六花お前はもう大丈夫か?」
六花の容態を確認する。赤くなっていた頬を撫でて確かめてみると、もうまったく赤みはないがやっぱり心配だ。
「あ、はい、もう大丈夫なのです。ナデシコさんと刹那ちゃんが癒してくれましたから」
それなら良かった、治癒能力持ちが居て助かったな。
「あの、主さま……久遠ちゃんと刹那ちゃんと相談してたのですが……わたしたちも戦えるようにしていただけませんか?」
安堵していると六花が何か決心したような面持ちでそんなことを言ってきた。