細工物
「鍛冶場と違って片付いているな」
「……細工は、細かい仕事が多いから。道具も小さいのが多いし、整理整頓をきちんとしておかないと、だめ」
火山から、生産区の森林の湖畔にある百々眼鬼の工房にやって来た。
一本踏鞴のところと違ってよく片付けられている。あそこは失敗作とか色々散乱してるから、大違いだ。大事な物や成功品はきちんと分けているのが幸いだが。
火山だから六花の目が届かないだけで、見つかったらお説教されるレベルなんだよな……。
「久遠は……っと」
「……さっきまでは、ここにいて、私が妹のところに行くときに、外に行ったから、この近くにいると思う」
それはさておき、今は久遠を探さないと。
「そうか、なら探しにいくか」
「……手伝う?」
「いや大した用じゃないからいい。ゆっくりこの辺りを見て回りながら探すわ。それに百々眼鬼はそいつの砥があるだろ」
百々眼鬼の申し出はありがたいが断る。居場所だけなら今すぐにでもわかるし、雷付与した妖刀の仕上げという仕事がある。
「……ん、わかった。困ったら、いつでも言って」
「ああ、わかった。
ところで、久遠は何でここに来てたんだ?」
「……細工物の、デザインについて、話してた。あの娘は、センスがいいから、色々参考になる」
センスねえ……。狐の妖怪はなんとなくきらびやかなイメージがあるな。きらびやかな物だと、六花や刹那には合わない気がするけど。
「……あの娘のは、少し派手だから、付ける人を選ぶけど、迷宮区に配置する、冒険者寄せにはピッタリ。上品な派手さだから、目の肥えた相手でも、魅了できる」
久遠を作成するときに、仕様変更で絢爛華麗って要素を追加してたから、その影響かな。……と言うか、
「魅了できるレベルなのか、スゴいな。ちょっと本格的に百々眼鬼に協力させてみるか」
「……私はありがたいけど、いいの?」
「ああ、久遠次第だがな。あと、大人しいタイプのデザインなら、刹那と話してみるのもいいかもな」
刹那にも優雅華麗って要素を追加しているから、同レベルの物を作れる可能性がある。
「……ん、それじゃあ、砥が終わったら、訪ねてみる」
「ああ、久遠の方は俺から話しておく。
それじゃあ、行ってくる」
「……ん、ありがと。それと、いってらっしゃい」
百々眼鬼の見送りを背に、細工工房を後にした。