衝角
すみません、昨日は朝から晩までずっと忙しくて、遅れました。
既に分配したものなのだから、次からでいいだろう。
「……あ、そうだ。さっき鬼面ライダーたちに会ったんだけど……」
「待て、鬼面ライダーって何だ?」
そんな存在は初耳なんだが。俺の内なる何かが激しくツッコめと叫んでるし、一文字違いでヤバくなるとも言ってる。しかもたちってことは複数かよ。
「……朧車に乗った、小鬼のことだけど?」
「鬼面って言うか、鬼そのものだろ」
確かに鬼面だし、ライダーだけどな。アイツらをそんな呼び方してたのか、お前は。
「で、アイツらがどうかしたのか?」
「……もし、ご主人に会うことがあったら、伝えて欲しいことがあるって」
「伝えて欲しいこと?」
「……うん、一鬼か二鬼だけでいいから、鉱山に常駐させて欲しいって」
常駐ね……鉱山のレースコースにハマったのか? 鉱山内部の戦力は不足してるからいいけど。
「それは構わないが、今お前に言っても仕方ないか」
「……私が伝えに行く?」
「わざわざ伝言で頼むような要望じゃないから、急がなくてもいいだろ。今、どの辺りを走ってるかはわからないだろ」
伝える必要はあるけど、アイツらは常に走り回っているから捕まえるのが面倒くさいんだよな。俺は場所はわかるが、そこに行くまでに、アイツらは他に移動してるだろうし。念話装置を使って、念話を送るという手もあるが、アイツらは走りに夢中になったら聞き流しそうな気がする。
「今度あたいから伝えとくよ。この間、朧車への装備品を作って欲しいってお願いされたし。まだ詳しい話はしてないから、向こうから来るハズだよ」
「じゃあ、頼めるか?」
「うん、まっかせといて」
どうしたものかと頭を悩ませていると、一本踏鞴が自分が伝えると言ってきたので、任せることにした。……けど、うっかり聞き流しかけたけど、
「朧車に装備品?」
アイツらに装備品って、何を装備するんだよ。
「うん、衝角が欲しいだって。あと、装備じゃないけど、車輪とかのメンテや交換・改良も頼まれてる。もちろんご主人の仕事が優先だから、空いた時間でいいってさ」
「車輪の方はともかく、衝角って……船に付いてるヤツじゃなかったか?」
確か船の体当たり武装。船首の先に角を作って、それで敵船をブッ刺すヤツ。
「うん、船じゃないけど、使い方は同じだよ。とりあえず、試験的に一個作ってるの」
……轢き逃げに飽きたのか? そうじゃないなら、衝角よりも、小鬼に槍でも持たせた方が早い気がする。