尻子玉
「ああ、いつもすまないな」
差し出された尻子玉を受け取り、礼を言う。
「クケケ」
「クケ」
河童たちは気にするなと言うが、河童たちにとっても大事な物だから、そういうわけにはいかない。
「クケェ、クケケ」
「いや、確かに妖刀の宝玉の材料だから俺にも重要な物だけどな、でも今よりも割合を増やすのはダメだろ」
そう、この尻子玉は一本踏鞴が改造した妖刀の柄頭についていた、あの石の材料なのだ。水奈が融合することで出来た水妖刀の核でもあり、宝玉というらしい。あの時に割れたアレはコクホウに頼んで、尻子玉を分けてもらったらしい。
あの宝玉はほとんど使い捨てなので、尻子玉が三個手に入る度に一個分けてもらっているのだが、河童たちはもっと持って行ってもいいと言う。しかし、
「だってアレはお前らの成長アイテムなんだから」
アレは河童の成長に関わる物らしく、あまり分けてもらうわけにはいかない。もらい過ぎるとその分、子河童の成長が遅れ、結果的に自分の首を絞めることになるのだ。
「クケェ?」
「ああ、子河童の成長を優先してくれ」
わりと切実な希望だ。親河童も精神はお調子者の子供だが、あほではない。せめて親のレベルまで成長して欲しいものだ。
◇
「ふぅ、暑くなってきたな」
「かなり火山活動が再開してきたからね。そろそろ本格的に復調するんじゃないかな?」
河童たちとは別れ、その足で火山の一本踏鞴のところまでやって来た。
「ほら、尻子玉だ」
「アリガト、ご主人。今回のはそこそこのだね」
尻子玉を渡すためだ。俺が持っていても仕方ないし、尻子玉の状態だと意味がない。
「そういえば、尻子玉って何なんだ?」
ふとここで、前々から気になっていたことを聞いてみた。宝玉になると知る前は気にならなかったのだが、アレだけの効果がある道具になるとなれば、どういう物か気になる。
「尻子玉は簡単に言うと、物質化した魂の欠片だよ」
「魂の欠片? そんなにスゴい物なのか、これ?」
名前からは想像がつかないな。