後処理
「ふむ、こんなところか」
「お疲れさまです主さま。こちらをどうぞ、生産区で採れた山葡萄を絞って作ったジュースなのです」
「お、ありがとう」
ダンジョンの手入れが終わったところで一息吐くと、タイミングよく六花がジュースを出してくれた。
「氷のグラスか」
「はい、術の制御の練習で作ってみました。まだ始めたばかりなので、今は形を整えるので精一杯ですが、いずれは模様などを入れようかと思っているのです」
紫色の液体が注がれた氷の器は多少いびつな形をしているが、始めたばかりなのを考えれば及第点だろう。
グラスを傾けると甘酸っぱい味が口の中に広がっていく。甘さと酸っぱさがそれぞれ、疲れた頭と身体を癒してくれる。
「自生植物の収穫もできるようになってきたか」
「ですね。コロポックルさんたちも大分慣れてきたようです」
無計画に大きな生産区を作った所為で、手が足りなかったコロポックルにも余裕ができてきたか。
もう少し慣れたら、コロポックル自体の数も増やして、畜産とかもしてみようかな。肉類はちょくちょく侵入してくる野生動物で何とかなるけど、卵や乳がそろそろ欲しい。その気になればポイント消費で作成できるけど、さすがにちょっともったいないし。
「……特に今日は子河童たちのイタズラも少なかったようですし」
……手が足りない理由って、生産区の大きさよりも、子河童の世話が大変だからじゃね?
「産女さんのおかげで大助かりだそうです。子育てが得意な方でよかったのです」
うん、確実にそうだ。そろそろアイツらも何とかしないとな。
それにしても、具体的に指示する前から子河童の面倒を見てたのか。元々の目的である縫製はできないけど、この方面で役に立つのは嬉しいな。六花以外にアイツらに言うことを聞かせられる者が増えるのはいいことだ。
「産女か……ゼンやツグミと色々あったけど、大丈夫かな?」
「それはゼンさんに任せるしかないかと……期待はできませんが」
なかなかに辛辣だね、六花ちゃん。……まぁ同意するけど。アイツはヘタレだもんな。
ゼンは肉体的にだけじゃなくて、精神的にも鍛えた方がよさそうだな。
このダンジョンで一番厄介なのは凶骨よりも、子河童の可能性が……