調査開始未遂
「そんなことより、どう使うかよ」
「いや、そんなことって……」
「お黙りなさい」
「はい……」
久遠の物言いに反論しようとした一本踏鞴だが、一言で黙らされた。
これは久遠が強いのか、一本踏鞴が弱いのか…………両方かな。
「どうって言われても、鉱脈がどういう感じなのかわからないから、何とも言えないんだが……。そもそも、それを調べに来たんだし」
「それもそうね」
「というわけで、一本踏鞴の出番だ」
「あ、うん……まぁ、いいや、色々諦めたよ。
調べるのはいいけど、あたいの専門は掘り出した後の鉱石の加工だから、鉱山や鉱脈にはあんまり詳しくないよ。それでもいいの?」
「ああ、だいたいでいい」
「は~い、ちょっと待っ……オブシ」
俺の指示に従い、駆け出そうとした一本踏鞴だが、その一歩目を踏み出した瞬間、おもいっきりずっこけた。
「顔がぁ~、足がぁ~!」
「あらら」
「……うわ、痛そう」
「大丈夫ですか!?」
「ニャ、ニャァ~!」
先ほどまで正座をしていたので足が痺れていたらしく、バランスを崩した。一本足なので、まったくリカバリーできず、おもいっきり顔面を強打してしまい、のたうち回っている。
「と、とりあえずわたしは顔を冷やしますから、刹那ちゃんは足をマッサージしてあげてください」
「ニャア!」
六花と刹那があわてて駆け寄って、治療に努める。
「うぎゃぁぁぁ~!」
こういう時、水奈がいれば一発で治るのだが、あいにく不在。今頃は精霊天馬に色々世話を焼いているところだろう。
治癒スキルを介しない治療なので、痛みなどが走るため、一本踏鞴は悲鳴をあげている。
「久遠、幻覚で痛みを止めることはできるか?」
「ええ、できるわよお兄様。ついでにしびれも止める?」
「ああ、頼む」
六花たちがやり辛そうだし、時間がもったいないので久遠にも治療に参加してもらうことにした。