お説教
今日も短いです。
「主さまから逃げ出すとは何事ですか!」
しばらく歩くと、六花の声が聞こえてきた。どうやらすぐそこにある洞窟の中にいるようだ。
「……今の声って」
「ああ、あそこみたいだな」
洞窟の中に入ると、そこには一本の足で正座させられている一本踏鞴と、その左右に挟むようにたたずむ久遠と刹那。そして正面に仁王立ちしている六花の姿があった。
ちなみに、洞窟内は久遠の狐火で明るく照らされている。
「……こういうこと」
「ああ、こういうことだ」
逃げた時の備えで、六花たちを待機させておいたのだ。
ぶっちゃけ、色々助かったのでまったく怒ってはいなかったのだが、それでもけじめとしてお仕置きは必要と判断したのだが、逃げたとなったら話は別。六花にお説教をしてもらうことにしたのだ。
石畳ですらない、ゴツゴツした岩のような地面に正座するのはかなりキツいだろう。
「できればこうならないことを願っていたんだがな」
「……逃げなくて良かった」
懇々とお説教される一本踏鞴の姿を見て、ポツリと呟く百々眼鬼。誤爆で目潰しになったとはいえ、頬を引っ張られた程度で済んだのが幸いだと思っているようだ。
まぁ、あの姿を見ればそう思うか。お説教している六花には妙な迫力があるもんな。なにせあの子河童たちですら、六花には一定の畏怖を持って接しているフシがあるくらいだ。
「いいですか、今後はああいうことはやってはダメなのです!」
「はい、はい。わかりました。今後一切ああいうことはしないと誓います」
待つこと十数分、ようやくお説教は終わりを迎えたようだ。
生まれてからの日数はともかく、見た目が幼い六花に一本踏鞴がへこへこ謝るのは微妙な光景だよな……。
「謝る相手はわたしじゃなくて、主さまなのです!」
「はっ、はいぃ!」
どうやらお説教はロスタイムに突入したようだ。