OSHIOKI
「あたいは、おねぇに妖刀を渡されて改造しただけだから、無罪だよっ!」
「……あ、ずるい」
「ずるいって、あたいが気付いた時には既にスリ取ってたじゃん。
と言うわけで、あたいは鉱脈を見てくるよ、じゃあね~!」
一本踏鞴は百々眼鬼に罪を擦り付けると逃げて行った。
「……私は悪くない。これは何かの陰謀」
一鬼取り残された百々眼鬼は弁解を始めた。
……いや弁解と言うよりは、言い訳か。
「陰謀って何だよ、陰謀って」
「……それは、遥か昔からこの地に潜む、影の末裔たちの仕業。彼らはいずれこの世を影で覆い尽くすつもり」
遥か昔から潜む影の末裔って……。何でお前はそれを知ってるんだよ、今日生まれたばっかだろうが。嘘をつくなら、もうちょっとマシな嘘をつけよ。
お仕置きとして頬を摘まんで引っ張る。
「下手な嘘はやめろ……ちょっと面白かったけど」
「いひゃひゃひゃひゃ、いひゃい、いひゃい!」
ちょっと面白かったことに免じて軽く摘まんで引っ張ってるのに、そんなに大げさに痛がるなよ。
「しょこ、メがありゅから、いひゃいの!」
「あ、すまない」
あわてて手を放して謝る。
頬の下にも眼があったのか……。閉じてる状態だと、普通の肌と見分けがつかないな。
「う~、痛かった……」
「すまない」
手を放すと、摘まんでいた位置から少し水が滲み出ていた。軽く涙目になっているのだろう。
わざとではないが、今のは俺が悪いので、改めて謝った。
「……いい。わざとじゃないし」
「いや、でも……」
「……いいから。元々私が悪かったんだし」
そうは言っても、目潰しになってたから、眼の妖怪相手にそれはダメだと思うんだが……。
「……どうしても、っていうなら、一本踏鞴にもお仕置して」
「あ、それはもうやっているから、大丈夫だ」
「……? もうやってる?」
……あまり気にしてたら、百々眼鬼が気に病むか。何か他の事で埋め合わせするかな。
「まぁ、こっちに来ればわかる」
そう言って、一本踏鞴が逃げて行った方へと歩き出した。
逃げられた時の備えはしてあったからな。……本当に逃げるとは思わなかったけど。
それにしても、百々眼鬼は全身に眼があるから、防御がかなり危なくないかな。全身が弱点みたいなものだと思うんだが……。
一応、非戦闘員の生産要員ではあるんだけど、万が一の時に備えて、ちょっと考えておいた方がいいかな。