精霊天馬
転生するにあたって、マスタールームでは手狭なので、生産区の森に場を移した。
「転生すると元には戻れないが、本当にそれでもいいのか?」
精霊馬と転生について一通り説明を受け、転生することを決めた一角天馬に改めて覚悟を問う。
わりと軽い気持ちで転生を奨めたのだが、説明している途中で気付いたのだ。成長以外の要因で自らが生まれた種を外れるのはかなり覚悟を要することだろう、ということに。
「俺の配下に加わることにもなるのだぞ」
そして、ポイント消費による転生は、ダンジョン勢力に組み込まれた者にしか、行えないことにも。
「ヒン!」
種を外れる苦痛と、魂で結ばれた主を救うために主を変える矛盾。
肉体と精神の両方に多大なる負担のかかるのだが、一角天馬の覚悟には一切の揺らぎがない。
「ならばもう言うことはない。その覚悟、受け取った」
──一角天馬が配下に加わりました。
「一角天馬に精霊転生の儀を使用、仕様変更・精霊馬限定」
俺が一角天馬の覚悟を受け入れると、ダンジョンシステムに承認されたので、すぐさま精霊転生の儀を行う。
──精霊転生の儀を行います。レベルはリセットされますが、よろしいですか?
※リセットされるレベルに応じて、転生後にボーナスが付きます。
「──承認」
転生とは生まれ変わることなので、レベルもリセットされてしまう。ボーナスが付くので、まったくの0からのリスタートではないが、レベルがリセットされるのはなかなか厳しいものがあるだろう。
あの不死一般人は転生直後だったのだろう。思い返せば、それっぽいことを言ってたような気がするし。
「ヒヒィーン!」
「……おうまさん、がんばって」
転生を承認すると、一角天馬は苦痛に耐えるように嘶き、輝き出した。
──精霊転生の儀・精霊馬限定により、聖獣・一角天馬は精霊馬へと転生、レベルボーナスにより聖霊獣・精霊天馬になりました。
光が治まると、そこにいたのは純白から翠緑に変わった他は違いが特に見当たらない、有角の天馬。
精霊馬ではなく、精霊天馬に生まれ変わった、一角天馬の姿があった。