表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/163

放流

 よし、放流しよう。

 外に出すと問題が起きるだろうけど、うちに置いておくよりはマシだ。情報にはなかったが、こういう剣は得てして周囲の人間を魅了して墜とす性質があるし。

 ぶっちゃけ、持ち主の狂騎士含めて関わりたくない。


「おい! 大丈夫か!?」


「ああ、丁度いい」


 考えをまとめたところで、狂騎士の仲間の槍の男が駆け寄ってきた。

 ……お前、ついさっきまで隠れてたよな。狂騎士が六花に言い寄ったと同時にソッコーでそいつから逃げたよな。……まぁ、その気持ちはよくわかるが。今心配してるのも仲間意識からじゃなくて、そいつの実家に睨まれたくないからだろうし。


「そいつを持ってとっとと帰ってくれないか。出来れば二度と来ないで欲しい」


「あ、ああ、このまま帰してくれるなら願ってもないことだが……二度と来ないのは無理だ。なんせ必要のなかった捜索任務はいえ、《宝剣エルディオン》が見つかっちまったんだ、本国に報告しねぇと。

 んで、報告しちまったら回収任務が下されっだろうからな。必要ではないが、有ったら有用なもんだよ、宝剣ってもんは。

 それに、コイツがこんな様子だと、コイツの実家から確実に報復があるぞ」


 ……ほぼ自業自得なんだが…………まぁ、貴族なんて人種にはそんなことは関係ないか。


「虚偽報告で適当に誤魔化せよ」


「そりゃ無理ってもんだ。基本的に貴族じゃない、平民階級の奴の任務報告は、虚偽探知の術式のもとですることになってるからな」


 ……なんて無駄にめんどくさい仕様。しかも貴族未満限定とか、明らかに捏造を意図してんじゃねぇか。

 ……ん? 待てよ、社会構造上、貴族と平民では貴族の方が少ない。ということは、必然的に任務報告も平民が行うことが多いはずだ。貴族ってのは基本的に奥でふんぞり返っているもんだしな。

 ということは、あまりコストのかかる術式は使用しないはずで、虚偽探知もあまり上等なものではない可能性が高い。


 つまり……、


〈久遠、聞こえるか?〉

〈ええ、聞こえるわお兄様。何か近くに居るのに念話だなんて……内緒で頼みたいことがあるのね?〉


〈ああ、話が早くて助かる。幻覚を頼みたいんだが……今、どのくらい魔力が回復している?〉


 幻覚に嵌めて、本人すら嘘だとわかっていない状態にすればいいんじゃないか? より贅沢を言うなら、記憶を弄れれば最高だ。

 ただ問題は幻覚を使える久遠の魔力。さっきまで狂騎士を幻覚嵌めにしていた上に、魔力どころか体力まで消耗したのでできない可能性が高い。


〈そうね……、こんな事ができるくらいかし……ら!〉

「クォン!」


「……ぐがっ!?」

「キャッ!?」


 ドサッ!


 魔力の回復具合を確認してみると、念話の末尾と同じタイミングで久遠が一鳴きすると一拍おいて、槍の男と魔法騎士の女が倒れる。


〈ま、油断だらけの相手に、不意討ちでショックを与えて気絶させる程度ね。で、彼らの記憶を弄れればいいのかしら?〉


〈ああ、できるか? と言うか、よくわかったな〉


〈会話の流れと、お兄様の思考から類推しただけよ。 でも、今のでまたほとんど使い切ったから少し待たないとダメね。まあ、今のをやらなくても無理だったけどね〉


 考えを読まれてるのか……まぁ、久遠ならいいか。考えを読んだ上でフォローしてくれてるし、それが無理なら時間稼ぎをしてくれてるからな。

六花は謎の直感力で蒼魔の考えを読みますが、久遠は思考計算で読みます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ