六花の仲裁
Side 六花
「まったく、お二人とも、主さまのダンジョンで仲違いはダメなのです」
「ヒョー……」
「で、でも……」
わたしは今、雷ヶ原に来て、鵺のツグミさんと産女さんの仲裁をしています。なんでも雷山猫から天雷虎に進化したゼンさんを取り合ってのケンカなんだとか。
本当なら苦戦しているかもしれない主さまの救援をお願いしに来たのですけどね……雷山猫さんたちから助けを求められちゃいましたから仕方がありません。ツグミさんの気分に呼応して天候が荒れていますからは雷山猫さんたちも大変なのです。
まぁ念のためですし、仲違いの原因の一つは主さまなので、主さまには少し我慢してもうのです。久遠ちゃんたちもいますし大丈夫でしょう。
……まったく、ゼンさんに丸投げなんてひどいのです。ヘタ……優柔不断なゼンさんに自分が原因の争いの仲裁なんてできるわけないのです。
今回の無茶も含めてお説教しないといけませんね。
「でもじゃないのです!
産女さんは今日出会ったばかりなのに……ゼンさんの気持ちを確かめずに口づけなんてダメなのです」
「ヒョーヒョー」
「ツグミさんも『そうだそうだ』じゃないのです! あなたはゼンさんに想いを伝えてすらいないのですから、産女さんを非難する資格なんてないのです!」
「ヒョ~……」
まったくお二人にも困ったものなのです。まぁ、ゼンさんがきちんとツグミさんに想いを伝えていれば……もしくはお二人とも受け入れるだけの器量があれば一番いいのですけど。ちなみにそのゼンさんはこの場には居ません。居ても役に立たな……じゃなくて、居ると言えないことがありますからね。
「で、でも……愛に時間なんて関係……」
「ないと、これまで積み重ねてきた時間に意味がないとおっしゃるなら、これから積み重ねていく時間にも意味がありませんね。どうぞゼンさんと番になるのはご辞退ください」
「う……」
「ヒョ、ヒョー」
……ちょっと言い過ぎましたかね?
産女さんと言い争っていたはずのツグミさんが庇っているのです。
でも積み重ねた時間に意味がないみたいな意見は、わたしと、わたし達と主さまの時間すら意味がないと言われているみたいで、到底受け入れる、いえ許せるものではないのです。
「とりあえず多少の言い争いならいいのですけど、周りに迷惑がかかるほどの仲違いは主さまにとって害になりますので、お止めください」
「う、うん」
「ヒョー」
とはいえ、わたしも少し頭にに血が上っているみたいなので、仲裁を切り上げるのです。ツグミさんも産女さんを庇うあたり、言い争いをほどほどに抑えるなら悪い関係にはならないと思うのです。
「では、わたしは……む」
ツグミさんたちの仲裁も終わり、主さまへの救援を申し出ようと思っていたのですが、主さまへの何やらお説教をすべきタイミングになったようで、今なら火山に行っても大丈夫な気がするのです。
「ツグミさん、すみませんが……」
早く行った方が良さそうな気がするのでツグミさんに連れていってもらいましょう。待っていてくださいね、主さま。
相変わらず六花ちゃんが謎の直感力を発揮しております