空から来る者
〈……パァパ〉
「どうした?」
水奈に注意されたので、集中して溶岩が固まるまで球体を保持していたのだが、その水奈から声を……余裕がない感じの声をかけられる。
〈……ごめん、もう、そろそろ……かたなから、はなれちゃう〉
「……は?」
え~と、刀から離れるってことは、水妖刀の形態を維持できなくなるってことだよな? ……まずくね?
今、凶骨を縛り付けている熔岩玉は当然水奈のちからで維持しているのだが、はるかにレベルが上の凶骨を拘束できる程の強度にしているのは水奈だけのちからではない。いや、正確には水奈だけで出せるような出力ではない。
水奈が妖刀に宿って能力をブーストして、俺が能力を使用することでようやく出力できているのだ。
つまり、水奈が妖刀から離れた場合、未だに固まりきってない熔岩玉で凶骨を抑えきれない可能性が高い。
「なんとかならないのか?」
〈……これ、以上は……かたなの方が……たえ、られない。……玉がわれ、ちゃう〉
玉っていうと……今は鍔のところにある水晶っぽい石のことか? ……もしかしてこれが水妖刀の要なのか?
ってんなこと考えている場合じゃねえな。何気にこっちの妖怪たちの消耗がでかいから、ここからもう一戦やるのは厳しい。侵入者がいるから大規模なダンジョン操作もできない。落とし穴や隔離部屋程度ならできるがダンジョン操作は外の奴らにはあまり見せたくないし……。
「……さまぁ……」
少しはもう見られているから、もう隔離……ん?
「水奈、何か言ったか?」
〈……ううん、でも今のは……六花ねぇの、声、じゃない……かな?〉
「六花が火山に来るわけがないだろ」
確かに六花っぽい声ではあったが、暑さに弱い六花はここに来れない。来れないからこそ久遠と刹那をここに寄越したんだし。
火山活動が停止した今なら冷えてきているので大丈夫だとは思うが、六花はそれを知らないはずだし。
「主さまぁ~……」
〈やっぱり、六花ねぇ……だよ〉
「六花だな」
どういうわけか、本当に六花のようだ。なぜ、どうやってここに来たんだ?
「あ、いました! ツグミさん、あそこです!」
「ヒョー」
声のした方を見ると、ツグミの背に乗る六花の姿がある。どうやら文字通り、飛んで来たようだ。あっちもこっちに気付いたらしく、六花が指示らしきものをしたかと思うとツグミが急降下してきた。
「主さま、今日はいったいどういうことなのですか!? 無理しないでくださいと言いましたよね!」
……どうやら今日もお説教されるようだ。